あうとわ~ど・ばうんど

どろんころんど

北野勇作氏の新刊「どろんころんど」を読んだ。

どろんころんど (ボクラノSFシリーズ)

どろんころんど (ボクラノSFシリーズ)

主人公は、ヒト型自律機械人形の『アリス』。アリスの使命は亀型子守ロボットの宣伝ショーをすること。しかし、長い休止モードから目覚めてみると、観客どころか人間の姿がどこにも見えず、世界は泥の海に変わり果てていた。アリスは自分の使命を果たすため、“冒険”へと出かける。というあらすじ。
冒険の中で出合う不思議な生き物の生態や面白い出来事の数々は、実際に読んで確認してもらいたいが、述べておきたいのは、セルロイド(=セル・アンドロイド)であるアリスの“心”について。展示発表会で観客(人間)の心を掴むために、繊細な情報処理学習プログラムを備えられたアリスは、人間のような“思考”や“感情”を持つ。むろんこうしたことはSFではおなじみのテーマであるけれど、著者独特の叙情感と絡み合い、ラスト直前のエピソードで思わず落涙してしまった。
書店ではどうやら児童書コーナーに置かれていることが多いようで、著者自身も中学生ぐらいのSFの入り口になるように書いた、と言っているけれど、いやいや、むしろ大人のほうがはまりそうな気がします。