あうとわ~ど・ばうんど

落下する緑・再読中

落下する緑―永見緋太郎の事件簿 (創元推理文庫)
田中啓文さんの「落下する緑―永見緋太郎の事件簿 (創元推理文庫)」、文庫化を機に再読中(実際には4度目ぐらい)。
主人公・永見緋太郎の人物造形が好き。デヴィッド・S・ウェアの代役を務められるほどの若手俊英テナーサックス奏者という設定。ジャズ以外のことはからきし知らないが、芸術家特有の(?)直観力の鋭さで次々と『謎』を解決してゆく。
という筋立てはともかく、演奏場面や奏者心理の描写がいいですね。山下洋輔の『それによって作者の信じるジャズの真髄が、ある時は熱くある時は軽くある時はユーモアを持って語られる』という解説は、正鵠を射ていると思う。著者のジャズ観が行間に濃く滲み出ていて、むしろそれを書きたいがためにミステリの形を利用しているのではないかと思わせるほど。
ところで。帯の文句に『クインテッ』と書いてあるのだが、出版まで誰も気づかなかったのだろうか。それとも、この謎も永見が解き明かしてくれるのか?(笑)