Human Feel / GOLD
Human Feel の新作が(実は Clean Feed よりも前に)届いている。
- アーティスト: HUMAN FEEL & ANDREW
- 出版社/メーカー: INTAK
- 発売日: 2019/01/19
- メディア: CD
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Andrew D’Angelo (as, bcl), Chris Speed (ts, cl), Kurt Rosenwinkel (g), Jim Black (ds)
12年ぶり5枚目(16年のデジタルEPを含めると6枚目)のアルバムとなる。結成から30年以上のグループとしては何ともスローモーなペースだが、90年代半ばに活動を休止してから時々思いだしたように再結成するだけで、実際には活動していない期間のほうが長いのだから、まあそんなものなのだろう。アンドルーとクリスの憂愁を帯びたアンサンブルからスタートする本作は、カートがふだんはメインストリームなシーンで活躍しているのを割り引いても、なんとも至極真っ当なジャズを聴かせ、さすがに皆丸くなったのか、円熟と見做せばよいのか、という感想も浮かぶけれど、アンドルーの切れ味鋭いアルトとクリスのスモーキーなテナーの両サックスプレイは、それ単体としても対比としてもやはり魅力的だ。ところで作品中の或る曲を聴いていると、もしまた10年後に再結成してアルバムを残すとして、レーベルが ECM だったとしても驚かないにちがいないと思わせる。
Larry Ochs | Nels Cline | Gerald Cleaver / What Is To Be Done
Clean Feed の新作が届いている。
- アーティスト: Nels Cline & Larry Ochs Gerald Cleaver
- 出版社/メーカー: Clean Feed
- 発売日: 2019/01/25
- メディア: MP3 ダウンロード
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昨年、洞窟における素晴らしいデュオ作品を残したラリー・オクスとジェラルド・クリーヴァーのコンビに、エレクトリックギターのネルズ・クラインが加わったトリオ。へしゃげたような音でコク深いオクスのサックスと、しなやかで躍動的なクリーヴァーのドラムの噛み合わせが良いのはもちろんだが、空間を多彩に塗り立てるクラインのギターの効果で、音楽が刻々と多様な表情を見せるのがまた味わい深い。なお、本作がレーベルの記念すべきカタログナンバー500番である。
参考動画
www.youtube.com
Kuzu / Hiljaisuus
26日に予告していた通り、JazzTokyo #250 にデイヴ・レンピスの新作『Kuzu / Hiljaisuus』のレビューを寄稿しています。
Tim Hill / but my mouth was full of stones and shadows
これもやはりサックスソロアルバム。
Tim Hill / but my mouth was full of stones and shadows
(Brazen Head Recordings, 2018)
Tim Hill (alto, sopranino & baritone saxophones)
アレックス・ワードとの共演で知られる英国のサックス奏者によるソロ作品。使用しているアルト、ソブラニーノ、バリトンの各サックスはいずれもキーが同じであるが、楽器が違えどやってることは同じ、にはならない。先夜紹介したティム・ウィークスの『なしくずしの死』とは違って、超バカテクを披露するわけではないのだけれど、それぞれのサックスの特性を生かした端整なインプロヴィゼーションの一曲一曲が楽しい。
Tom Weeks / Mort à crédit: Alto Saxophone Solos 2017
ここ数週間、何を聴いても耳を素通りするばかりだった(理由は自分なりに分かっている)が、久しぶりに心をとらえたのがアルトサックスの無伴奏ソロだったという事実は、わたしの或る一側面を表しているのかもしれない。
Tom Weeks / Mort à crédit: Alto Saxophone Solos 2017
(Wolfsblood Records, 2018)
Tom Weeks (as)
トム・ウィークスは、米国サンフランシスコ・ベイエリアの作曲家、即興演奏家、サックス奏者。バークリー音大でジャズ作曲の学士号を取った後、ミルズ大で作曲の修士号を得たといい、ロスコー・ミッチェルやフレッド・フリス、ジーナ・パーキンスなどに学んだ(と、バイオグラフィーには書いてある)。
アルバムは全12曲。引き攣るような高音やら、多彩な異化音やら、腿を使って音をミュートさせる手法やら、マウスピースで遊ぶ芸やら、ジョン・ゾーンがマサダ系フレーズを吹くときのような感覚を覚える個所も多々あって、確実に影響を受けているだろうと思われるのだが、多様多種の拡張テクニックを駆使しつつも、どこまでも瑞々しく美しい音そのものが、わたしの耳をつかまえて離さない。
なお、既にお気づきの方もいると思うが、タイトルの『Mort à crédit』とは、フランスの小説家ルイ・フェルディナン・セリーヌの『なしくずしの死』、すなわち阿部薫の有名アルバムと同じであり、それが念頭に置かれてるのは間違いない、と確信させる演奏でもある。今後、当ブログでは彼のことも推していこうと思う。