あうとわ~ど・ばうんど

1971年新宿~2018年札幌。阿部辰也の過去と現在、2つの「フリージャズ最前線」をめぐって

伝説の新宿ピットイン・ニュージャズ・ホールに出演経験があり、現在は北海道で演奏されているサックス奏者、阿部辰也さんにお聞きした話を、ライブリポートとともにまとめた記事が JazzTokyo 誌に掲載されています。ぜひご一読ください。

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KAZE - Atody Man

藤井郷子還暦記念シリーズの2枚目、KAZE 通算5枚目の新作を聴く。

Atody Man (Circum-Libra204)

Atody Man (Circum-Libra204)

Christian Pruvost(tp), 田村夏樹, 藤井郷子(p), Peter Orins(ds)


逐一聴いているわけでないが、KAZE の音楽は面白い。グループ名を体現しているのはやっぱり2本のトランペットであって、ぴたり重なって一本の流れであったかと思えば、ほどけて、ばらばらに渦巻いたり、絡まり合ったりして、どの作品だろうと都度都度の遣り取りを聴いているだけで常に楽しい。人生を河に喩えた古典のひそみに倣って下手に表現すると「ゆく風の流れは絶えずして、しかももとの流れにあらず。淀みに浮かぶ響きは、かつ消えかつ結びて、久しくとどまりたるためしなし。」とでも言えばよいか。


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Fire! - The Hands

Fire! の新作を聴く。

The Hands

The Hands

Mats Gustafsson (ts, bs, bass sax, live electronics) Johan Berthling (elb, b) Andreas Werliin (ds, perc, feedback)


09年の『You Liked Me Five Minutes Ago』から数えて、CDとしては9枚目。ということになる。2枚目以降はゲスト(ギターが多い)を迎えたり、オーケストラ化したりしているので、オリジナルメンバー3人によるアルバムは1枚目以来久しぶり、というか1枚目すら1曲のみとはいえゲストヴォーカルが入っていたので、純然たる3人のみによる作品は意外にもこれが初めてということになる(LPのみの作品のことは知らない)。ということもあったのかどうか、作品から受ける印象は「原点回帰」だ。ひと回りして帰ってきたグループの音楽は、二回り目にはどんな表情をみせてくれるだろうか?


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Christian Lillingers GRUND / C O R

気づいたら、2週間もさぼっていた。

C O R

C O R

Christian Lillinger (ds, compositions) Pierre Borel (sax) Tobias Delius (sax, cl) Achim Kaufmann (p, rhodes) Christopher Dell (vib) Robert Landfermann (b) Jonas Westergaard (b)


昨年、本作にも参加する Tobias Delius とのデュオ「Dicht」(8月15日)、トランぺッター Peter Evans らとの Amok Amur による「We Know Not What We Do」(5月2日)、Samo Šalamon の「Colours Suite」(3月30日)など印象的作品でドラムを務めたドイツの Christian Lillinger の新作。グループとしては、Clean Feed からの「First Reason」(09年)、「Second Reason」(12年)、Pirouet からの「Grund」(15年)に続く4枚目(きっちり3年おきというのが面白い)になるが、本作は彼が設立したレーベル Plaist による初作品である。

メンバーは、Lillinger が様々なプロジェクトで共演するミュージシャンたちを集めた、いわばオールスター編成(1枚目のみ現在と異なる)。本作品は彼自身のレーベル第一弾ということもあってか、彼が全曲の作曲を担当し、どの曲もコンポジションと即興が精妙に組み合わされ、隅々まで彼の美学が行き渡っている。「アウト・トゥ・ランチ」の展開形を思わせる冒頭のタイトル曲から昂奮しまくりで、様々なタイプの楽曲が披露され、ありきたりでない個性を持ったメンバーたちの快演も手伝って、最後まで聴きごたえ抜群である。


参考動画
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坂田明 - AKIRA SAKATA / early 1980's

なぜか突然、坂田明さんの Better Days 時代の 25cmLP と 45回転30cmシングルが、3 in 1 で再発されている。

AKIRA SAKATA/early 1980?s

AKIRA SAKATA/early 1980?s

坂田明 (as) 神谷重徳 (syn) 吉野弘志 (b) 仙波清彦 (perc) 青山純 (ds) 布施隆文 (computer ds) MISHIO (vo) 千野秀一 (key) 村上“ポンタ”秀一 (ds) 永田どんべい (b) 松本治 (tb) 川端民生 (elb) 藤井信雄 (ds)


収録作は Better Days レーベルに残された10作品のうち、第1弾の「テノク・サカナ」(80年9月)、6枚目にあたる「wha-ha-ha LIVE DUB」(81年9月)、最終作となったサカタ・セクステットの「トラウマ」(82年10月)、と見事にほぼ1年おきにばらけている。どれもテクノ・ポップというのかニューウェイヴというのか知らないが、40年近くたった現在の耳で聴くと表層は古く懐かしく聴こえ、多くの時間は『これじゃない感』にも心が支配されてしまうのだけれど、時折出てくる坂田さんのアルトのブロウはああ今と何も変わっていない、とうれしくなるのだった。