あうとわ~ど・ばうんど

Unstable Ensemble / Embers

先日書いた「ちかもらち」の新作CDが届いてみたら、レーベルのサービスなのか、注文した覚えのないCDが同梱されていた。

Embers

Embers

Marty Belcher (ss, as) Jason Bivins (elg) Ian Davis (perc) Matt Griffin (perc) Eric Weddle (mixing board, cassette recorder)


まったく知らない人たちである。今は活動していない(?)音響インプロのグループらしいが、グループとしては3枚目のアルバムにあたるそうだ。それ以前の作品がどうだったか知らないけれど、サックス、ギター、ドラム、エレクトロニクスによる比較的静かな即興であり、各楽器による点描が像を結ばないよう微妙にコントロールされているように感じる。ふだんは聴かないタイプの音楽だし、聴いても入手はしないだろうが、試聴なしにまったく想像のつかない音楽を聴く体験というのも、たまにはいいものである。

Louis Minus XVI / De Anima

おととし7月に聴いて印象に残っていたフランスのグループ、Louis Minus XVI の新作が出ていたことに気づく。


Louis Minus XVI / De Anima
BeCoq Records, 2017)
Adrien Douliez (as) Jean Baptiste Rubin (ts) Maxime Petit (b) Frédéric L'homme (ds)


バンドとしての基本路線は変わらぬながら、サックス2人のコラボレーションは、以前に聴いた「Kindergarten」よりも協調色が強い印象。とくに3曲目、憂愁的なメロディーを共にひたすら反復・発展させていく演奏が気に入った。

Bobby Previte / Somewhere, In Italy - Part II

先月聴いたボビー・プレヴァイト「Weather Clear, Track Fast」の拾遺ライブ第2弾が出ている。


Bobby Previte / Somewhere, In Italy - Part I
Bobby Previte (ds) Jamie Saft (p, org) Cuong Vu (tp) Andrew D'Angelo (sax, bcl) Andy Laster (sax, cl) Curtis Hasselbring (tb) Lindsey Horner (b)


第1集と同じく、約20年前のよくできたコンテンポラリージャズ、である。たしかに昔の音楽ではあるけれど、プレヴァイトがこの音源に思い入れを持ち、再び今世界に送り出してきた理由は、聴き進めていけばわかる気がする。第2集ではジェイミー・サフトのピアノと、アンドリュー・ディアンジェロバスクラリネットがひときわ印象に残った。

Akira Sakata & Chikamorachi with Masahiko Satoh / Proton Pump

ついに発売された。

Proton Pump

Proton Pump

Akira Sakata (as, cl, vo, perc) Masahiko Satoh (p) Chris Corsano (ds) Darin Gray (upright bass, perc)


聴く前から傑作だと確信していたが、聴いてみたらやっぱり傑作だった。2015年10月、新宿ピットインにおける録音。こういう言い方は誤解を招くかもしれないが、佐藤さんの理知的で鮮やかなピアノによって、ちかもらちの音楽に新たな息吹がもたらされたかのようだ。冒頭のタイトル曲「陽子ポンプ」から理知的ながら稠密なピアノに煽られて、いつもの3人がぶっ飛ばす。続く「弾丸アポトーシス」に至っても、その勢いは止まらない。3曲目「どんぐりの化学結合」は、ピアノが繰り出す童謡リズムを細分化したような小気味よいパルスを中心に、坂田さんがかつての新童謡よろしく『リンゴ追分』『七つの子』『どんぐりころころ』を結び付け、後半はアルトで疾駆する。そして最終曲「真核生物の航海」は、フリーながら終盤は何とも真っ当なジャズ的展開に驚かされた。坂田さんはもちろん、佐藤さんも、いつまでたっても過激だなあ。繰り返すが傑作。ところで、坂田さんと佐藤さんの本格的共演アルバムって、もしかして初めて?


試聴

1月末に聴いた再発盤

1月末に聴いた再発盤を、前回同様に並べ置き。

Magic Malik Fanfare XP

引き続き Denis Guivarc'h が参加している Onze Heures Onze の新作を聴く。

Magic Malik Fanfare XP

Magic Malik Fanfare XP

Malik Mezzadri (fl, vo) Fanny Ménégoz (fl, vo) Maciek Lasserre (ss) Pascal Mabit (as) Denis Guivarc’h (as) Olivier Laisney (tp, vo) Johan Blanc (tb) Maïlys Maronne (melodica) Alexandre Herer (fender rhodes) Daniel Moreau (syn) Jonathan Joubert (g) Kevin Lam (g) Nicolas Bauer (b) Vincent Sauve (ds)


フランスのヴォイス兼フルート奏者、Magic Malik (aka Malik Mezzadri) の新作。先日のオーケストラと重なっているメンバーも多い。マリクの音楽は、M-BASEふう複合リズムに謎のエキゾチシズムを振りかけたようなサウンドが持ち味。悪くはないのだけれど、わたしはリーダーにはさほど興味がなくて、デニスのアルトサックスが登場するのを待ち構えるのだが、やはり活躍が少ない。ちなみに YouTube にはこういうのとか、こういうのとか、デニスがスティーヴ・リーマンやルドレシュ・マハンサッパとバトルさせてみたいほどの熱狂的ソロを繰り広げるライブ映像が多数転がっているのに、アルバムとなると、実に素っ気ない扱いとなるのは何とも勿体ないことである。


参考)文中で例に挙げた、デニスが活躍する動画(1本目は2分半頃からのソロ)

www.youtube.com
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Onze Heures Onze Orchestra / Vol 1

フランスのレーベル Onze Heures Onze のアルバムを取り寄せた。

Onze Heures Onze Orchestra, vol. 1

Onze Heures Onze Orchestra, vol. 1

Alexandre Herer (p, fender rhodes) Julien Pontvianne (ts) Olivier Laisney (tp) Stéphane Payen (as) Denis Guivarc'h (as) Stephan Caracci (vib) Joachim Govin (b) Florent Nisse (b) Thibault Perriard (ds) Franck Vaillant (ds) Johan Blanc (tb) Michel Massot (tb) Magic Malik (fl) Alban Darche (bs)


レーベル主要ミュージシャンが勢ぞろいした(のかどうか、正確には知らない)オーケストラ。もっとも、わたしの目当ては当然 Denis Guivarc'h なのであるが。総勢14人ながら全員がそろうことはなく、ベースとドラムとトロンボーンが曲によって入れ替わり、フルートは冒頭曲のみ参加、バリトンサックスは逆に最終曲のみ。つまりは全7曲を各9~10人が演奏する。人数が多いのでそれぞれの活躍の場(ソロ)は1~2度、お目当てのデニスも彼に捧げられた6曲目でようやくフィーチャーされる(『らしさ』はきちんと聴かせるのが救い)。オーケストラの名が付いているものの、アンサンブルをじっくり聴かせる展開は少なく、どちらかといえばコンボを聴いている感覚で、空間がスカスカしてオーケストラを聴いている感じがほとんどしない。コンポジションはメンバーが担当し、しかし全曲、作曲者が違う。ので、曲調も曲想もアレンジもさまざまな曲たちが、ダイジェストのように演奏されていく。と説明していると、まるで貶しているみたいだが、どちらかといえば気に入って「Vol 2」が楽しみになっているのだから不思議なものだ。

ちなみにこのレーベル。どうもフランスの Pi Recordings を目指しているんじゃないか、という気がしてならないのだけれど。


参考動画
www.youtube.com
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