あうとわ~ど・ばうんど

Arthur Blythe - Da-Da / Basic Blythe

アーサー・ブライスのコロンビア時代の作品をリイシューした廉価2枚組シリーズの「完結編」が出ている。

Da

Da

Da-Da : Arthur Blythe (as) Olu Dara (cor) Cecil McBee (b) John Hicks (p) Bobby Battle (ds) Geri Allen (keyb) etc.
Basic Blythe : Arthur Blythe (as) John Hicks (p) Anthony Cox (b) Bobby Battle (ds) etc.


ブライスのコロンビア9作品のうち、86、87年録音の8、9枚目をまとめたもの。「Da-Da」のみ、初CD化と思われる。2枚の前作にあたる「Put Sunshine in It」(昨年6月27日参照)でフュージョン路線に行ってしまったブライスだったが、「Da-Da」はそれを半分踏襲しつつ、半分はその後パートナーとなるジョン・ヒックスやセシル・マクビーを迎えたクインテット、コロンビア最後となる「Basic Blythe」はストリングス入りのカルテットでスタンダードなども演奏していて、このあたり当時のジャズリバイバルが関係があるのかどうか。いずれにせよブライスはヒックスらのサポートで気分よさそうにブロウし、「Da-Da」で『Odessa』、「Basic Blythe」では『Lenox Avenue Breakdown』とコロンビア初期のレパートリーも再演した後、約10年在籍したレーベルを離れることになる。

Lunar Error / Sêlêne

海外レーベルにCDを注文すると、頼んでないアルバムをオマケに付けてくれることが多く(経験的にはフランスのレーベルが多い)、新参者に対するサービスだとばかり思っていたが、2回目の注文時も「またしてもありがとう。今回はこれがオススメだから同封しとくよ(大意)」というメッセージとともに再びオマケを付けてくれるので、もしかするとそのレーベルのデフォルトサービスなのかもしれない。これはそんなアルバムで、2月に紹介した『Louis Minus XVI / De Anima』のオマケだった(CDの山に3か月間埋もれていた…)


Lunar Error / SêlêneBeCoq Records, 2017)


ジャケットの中身をなーんにも確認せずにとりあえずCDをトレイに載せてみたところ、アンビエントな実験的電子音楽とでもいうのか、程よく耳障りで程よく心地よい電子音めいたものが約30分にわたってさまざま生起しては消滅を繰り返し、うむ悪くないぞという感想を持った。そこでようやくジャケットでメンバーを確認してみたら、なんと10人も参加しており、しかも電子音だとばかり思っていたものが、管楽器やらピアノやらチターやらギターやらバンジョーやらドラムやらの拡張奏法で奏でられた音(または加工音?)だったことを知り、軽く衝撃を受けた。こりゃすごい、と、この音楽に対しての認識は改まったものの、まあ感想としてはとくに変わらないのだけれど。


Matthieu Lebrun (cl) Mathieu Lilin (bs) Gabriel Lemaire (saxophones) François Ella-Meyé (p, cithare) Claude Colpaert (gangsa gantung, harmonium indien...) Thomas Coquelet (harmonium "Guide chant Kasriel", table de mixage, micros contact...) Léo Rathier (banjo, objects) Paul Ménard (elg, effects) Pierre Denjean (g, gong) Quentin Conrate (batterie incomplète)

Ornette Coleman Trio Live Manchester Free Trade Hall 1966

レアラジオ音源を発掘リリースしている Hi Hat レーベルから、オーネット・コールマンの1966年5月の英国ライブが出ている。

LIVE MANCHESTER FREE

LIVE MANCHESTER FREE

Ornette Coleman (as, tp, violin) David Izenzon (b) Charles Moffett (ds)


前年に『At Golden Circle』を残したトリオによる2枚組。音質も悪くない。随所に頻出するオーネットのフレーズを聴いていると、周りのサウンドはどうあれ、この約10年後の『Dancing In Your Head』と本質的にはさほど変わらないことが分かる。ところで詳しくは上記のリンクを参照してもらいたいが、このレーベルからは今後、78年のカーラ・ブレイ、66年のポール・ブレイ(現在出ているドイツの演奏でなく、スイスでのもの)、68年のファラオ・サンダースといった音源も発売予定になっている。

Dog Life / Dog Life

3月27日に紹介した、スウェーデンのサックス奏者アンナ・ホグバーグが参加する Dog Life の前作を取り寄せてみた。(リーダーはどうやらドラムの人らしい)

Dog Life

Dog Life

Anna Högberg (saxophones) Finn Loxbo (elb) Mårten Magnefors (ds)


ホグバーグのサックスについて、最新作「Fresh From The Ruins」の感想に『ただひたすらにリフを積み重ねていく、愚直なまでのひたむきさ』と書いたが、この作品でもその形容は変わらない。しかし新作はバンドとして練られたかたちなのだということが、この粗さもあり、いろいろな曲や演奏を試している5年前の録音からは遡行的に感じ取ることができる。


Kira Kira / Bright Force

JazzTokyo 今号(に限らないけど)は藤井郷子特集のようになっていて、このアルバムも(レビューではなく)聴きどころチェックに載っている。

ブライト・フォース (Libra 204-048)

ブライト・フォース (Libra 204-048)

田村夏樹 (tp) Alister Spence (rhodes, effects pedals & preparations) 藤井郷子 (p) 竹村一哲 (ds)


どちらがグループ名で、どちらがタイトルか分からなくなりそうになるが、藤井さんのネーミングセンスを理解していれば「キラキラ」がグループ名だということはすぐにわかる(笑)。昨年9月、オーストラリアからスペンスを迎え、ドラムに竹村を起用したワンナイトユニットによる、なってるハウスでのライブ録音。藤井・田村の疾風の中にも抒情を感じ取れる融通無碍の響き、空間を螺旋状にゆがめるようなスペンスのフェンダーローズに対し、慣れた3人のサウンドに矢継ぎ早に楔や礫を打ち込んでいくかのような竹村の攻撃的ドラミングがスリリング。アルバム前半が「動」、後半が「静」(実際の演奏順は逆らしいが)という対比も鮮やか。

Yuko Fujiyama / Night Wave

札幌出身NY在住ピアニスト、藤山裕子さんの新作を聴く。

Night Wave

Night Wave

Yuko Fujiyama (p) Jennifer Choi (violin) Graham Haynes (cor, flh) Susie Ibarra (ds, perc)


id:yorosz さんのツイートを読んで入手した。そういえば昨年、藤山さんのライブを初めて観た時に「ヴァイオリンや、スージーのドラムらとレコーディングをしたが、まだどこから出るかは決まっていない」と語っていたことを思い出し、なるほどこれがその作品か、と気づいた次第である。藤山さんはたしかジャズピアノのバックボーンを持たぬまま、セシル・テイラーを聴いてフリージャズに向かった人で、彼女のピアノについて昨年のブログに「抽象的な感じが一つもない、常にある種の情感を湛えた不思議なフリージャズピアノ」という感想を記したけれど、本作における彼女のプレイに対してもやはり同様の印象を持った。

アルバムは全15曲、ピアノソロやカルテット、デュオ、トリオなど様々な編成で、各曲には「様々の色の糸が織りなす物語」「まるで4人が一斉に口論しているよう」「悪徳に対する憤り」「雄弁な沈黙が語る言葉」「丘の上に大きな古い木がありました。100年以上人々を見守ってきました。その木が語った話」といった解題が付され、たしかにその通りの『物語』や『情景』が表現されていく。ちなみにカルテットの激しい演奏では、グラハムとスージーは、どうしてもジャズイディオムが出てしまうあたりが何ともほほえましい。