あうとわ~ど・ばうんど

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Don Cherry - Live at the Bracknell Jazz Festival, 1986

旧作 Don Cherry Carlos Ward

年末年始に仕入れた中古盤に戻る(このペースでは、全て聴き終えるのは2月になりそうだ)。


Nu

Nu

Don Cherry(pocket tp, doussn'gouni, p, vo) Carlos Ward(as, fl) Mark Helias(b) Ed Blackwell(ds) Nana Vasconcelos(per, berimbau, vo)


このアルバム、田中啓文さんのレビューを読んで以来ずっと探していたのだった。めでたしめでたし。私にとっては何と言っても、カルロス・ワードの活躍がうれしくて、冒頭の長尺オリジナル曲「Lito」(この曲をタイトルに関した彼の初リーダー作のCD化もいつかぜひとも実現してほしいものだ)をはじめとして、フリーでバピッシュで陽気でほの哀しい彼のアルトの魅力がこれでもかと展開される。チェリーのプレイもバラエティ豊かで、オーネット・コールマンと出会う前は名の知れた期待の若手バッパーだった、らしいのも容易に肯ける。


試聴(オーネットの曲)
www.youtube.com

参考動画(同じメンバーによる同時期のライブ)
www.youtube.com

Raphael Malfliet - Noumenon

新譜

興味は覚えつつ何となくスルーしていたのだが、id:kanazawajazzdays さんが何度も言及したり(こちらこちら)、id:yorosz さんが2016年のベストの一枚に選んだりしていた(こちら)ので、遅ればせながらCDバージョンで聴いてみた。
(なお正式リリースはまだ3カ月以内らしいので、カテゴリーは「新譜」扱い)


Raphael Malfliet - Noumenon
Ruweh Records, 2016)
Raphael Malfliet(bass guitar) Todd Neufeld(electric guitar, acoustic guitar) Carlo Costa(ds, per)


なるほどこれは滋味深い。抑制された音数によって創られた音楽は、それを効果的に聴かせるためにこだわり抜いたに違いない音そのもの、もそうだし、何より音と音の隙間、が心地よい。ジャズにおいては限られた空間にどれだけ多くの音を詰め込めるかが高度なテクニックの証しみたいなところがあるけれど、かつて田中啓文さんが阿部薫を「静寂を吹く男」と表現したように、どれだけ少ない音で聴かせるか、どれだけ無音を聴かせて音楽として成立させるか、というのもまた別種の高度なテクニックなのであり、この音楽はそうしたテクニックに裏打ちされているように感じる。演奏は作曲部分と即興部分がかなり厳密に練り込まれているようで、フリージャズともフリーインプロヴィゼーションともつかない不思議な音響空間、という評も見たが、私のいいかげんな耳は逆に(3人がもともと手練れのジャズミュージシャンであるという事実を抜きにして)どうしようもなく「ジャズ」を感じてしまった。それはおそらく彼らの音の扱い方でなく、間の扱い方にあるのではないかと思っていて、われわれが「ジャズ」を感じる時というのは(それがたとえ敷き詰められた音であったとしても)音と音の「間」こそ重要なのだ、ということを示しているのではないだろうか(まあ当たり前かもしれないけど)。


参考動画
vimeo.com
vimeo.com

Zug Zug

Hannes Buder 新譜 DL

ドイツの弓弾きギタリスト Hannes Buder が bandcamp ページを開設し、ダウンロード新譜をリリースしたと知らせてきたので即購入した。


Zug Zug - Zug Zug(2017)
Todd Capp(ds) Andrew Lafkas(b) Hannes Buder(bowed guitar)


おお今回も面白いではないか。「Zug Zug」は米国からドラマーとベーシストを迎えたトリオの名であり、アルバムタイトルでもある。コンセプトとしてはカフカ鼾に共通するものがあるかもしれない。20分以上の全2曲で構成されるが、どちらの曲も静かな出だしからドラマチックな終局に向かっていくような音楽だ。なお彼の bandcamp では、当ブログで以前取り上げた「Luc Houtkamp & Hannes Buder - The Malta Sessions」(12月27日)や「Hannes Buder - Changes Ⅱ」(15年6月25日)などのDL音源はもちろん、CDも販売されているので、興味を持った人はぜひともアクセスしてみてほしい。


参考動画(Todd Capp と Hannes Buder のデュオ)
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Crump - Laubrock - Smythe / Planktonic Finales

新譜 Ingrid Laubrock

イングリッド・ラブロックの新譜を聴く。

Planktonic Finales

Planktonic Finales

Stephan Crump(b) Ingrid Laubrock(ts, ss) Cory Smythe(p)


タイトルから想起されるように、浮遊生物たちの戯れ、を企図しているのだろうか(もっともプランクトンと言えば、どうしても坂田明さんを思いだしてしまうのだけれど。笑)。全11曲の中には爆発的な演奏もあるのだが、空間を気持ちよく揺するクランプのベースの響き、もし物質の形を取るならば表面は必ずやカシミヤのような触り心地となるはずのラブロックのサックスの音色、クラシック系ピアニストとして一廉の人物である(らしい)スマイスの綺麗なピアノの音とが行き交いしながら、全体的としては内省的というか瞑想的なムードが支配している。

渋さ知らズ / 渋樹

新譜 不破大輔 北陽一郎 立花秀輝 纐纈雅代 片山広明 登敬三 石渡明廣

渋樹 JUJU

渋樹 JUJU

不破大輔(conduct) 北陽一郎(tp) 石渡岬(tp) 立花秀輝(as) 川口義之(as) 纐纈雅代(as) 片山広明(ts) 登敬三(ts) ヤマナシ・ミズキ(ts) 鬼頭哲(bs) RIO(bs) 高橋保行(tb) 菱沼尚生(tuba) 石渡明廣(g) 斉藤“社長”良一(g) 小林真理子(eb) 太田惠資(vl) 山田あずさ(vib) 山口コーイチ(p) 関根真理(per) 磯部潤(ds) 山本直樹(ds) 渡部真一(vo) 玉井夕海(vo)


メンバー1人1人のリンク貼るのは疲れた。というのはともかく、渋さ知らズの新作はクラシックのカバー集。取り上げられている作曲家はベルリオーズ、サティ、ドボルザークと自分ですら知っている(聴いたことがある)人たちで、興味を覚えて久々の渋さ新譜購入と相成った(ちなみに地元タワレコで購入したら特製ステッカー付きでした)。とはいえ、分かりやすくメロディーの出てくる「ジムノペディ」と「家路」(から自然に What A Wonderful World につながる)はともかくとして、アルバムの大半を占める「幻想交響曲」は原曲を聴いたのが遥か昔なので、もはやどんな曲だったか思いだせないし、当然アレンジがどれほど原曲から隔たっているかすら見当もつかないのであって、結局、渋さがやれば全部渋さになってまうのだな、などとバカみたいな感想しか浮かんでこないのだった。やれやれ。


試聴
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Comanda Barabba - Jazz Resistant

旧作 Christian Ferlaino Tim Trevor-Briscoe

昨年末に聴いた無伴奏ソロ作品で好印象を残したイタリアのサックス奏者 Christian Ferlaino が参加するグループのアルバムを取り寄せてみた。

Jazz Resistant

Jazz Resistant

Tim Trevor-Briscoe(as, cl) Christian Ferlaino(bs, as) Nicola Guazzaloca(p) Luca Bernard(b) Gaetano Alfonsi(ds, per)


むろん事前にある程度試聴はしていたのだけれど、実際に聴いてみても、うむ、これはなかなか良いや。装いとしてはコンテンポラリージャズというのか現代ジャズというのか、そういうラベル貼りはプロに任せるけれど、構成もコンポジションもしっかりしたストレートアヘッドなジャズながら、5人それぞれの演奏は展開によってはフリー系でも何でもござれで多くのスタイルに通じヴァラエティ豊か、というと PBB のグループを思いだすが、あれは PBB のオリジナリティというよりイタリアジャズの特質なのかもしれない。上記作でアルトを吹いていたクリスチャンは主にバリトンを吹き、アルトを吹いているのは Tim Trevor-Briscoe という人だが、この人も非常に上手い(PBB に倣って今後 TTB と呼ぶことにする)。日本の中央線ジャズが好きな人あたりにも受け入れられやすいスタイルじゃないだろうか。うーむイタリア恐るべし。これはぜひとも TTB の別作品も聴いてみたいぞ。というか、さっき調べて注文してしまいましたとさ。


試聴
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Momentum 1 : Stone (後半)

新譜 Ken Vandermark Nate Wooley Joe Morris Okkung Lee Paal Nilssen-Love William Parker

ヴァンダーマーク6枚組新作の後半(Disc 4~6)を聴く。


Momentum 1 : Stone
Audiographic Records, 2016)
Disc 4:Ikue Mori(electronics) Joe Morris(g) Ken Vandermark(reeds) Nate Wooley(tP)
Disc 5:Christof Kurzmann(ppooll, electronics) Okkyung Lee(cello) Marina Rosenfeld(turntable, electronics) Ken Vandermark(reeds)
Disc 6:Paal Nilssen-Love(ds) William Parker(b) Ken Vandermark(reeds) Steve Swell(tb)


Disc 4 は3日目の 1st セット、Disc 5 と 6 が5日目の両セット(昨日も紹介したがセットリストはこちら)。注目は何と言っても、Disc 6 のウィリアム・パーカーが加わったカルテット。パーカーとヴァンダーマークの組み合わせはありそうであまり無くて、ブロッツマンのシカゴテンテットにパーカーが何枚か加わっているが、コンボ単位での共演はちょっと記憶にない。さらに希少なのがニルセンラヴとパーカーで、詳しく調べてみないと分からないが、公式録音は初めてなんじゃないだろうか。ということで、スティーヴ・スウェルには申し訳ないが、このトライアングルにばかり注目して聴いてしまったのだが、いやはややはり凄いなあ。パーカーのベースが赤色巨星のように、音場の密度を質量を重力を速度を光度を熱量を直径を増大させながら膨張させていく。できればトリオでレギュラー化していただけないものでしょうか。あとは Disc 5 も意外と言っては失礼だが、とても素晴らしい。オーストリア出身ベルリン在住の電子音楽家クリストフ・クルツマン、ニューヨークが拠点の即興電子音楽家・ターンテーブリストのマリーナ・ローゼンフェルド、異能のチェロ奏者オッキュン・リーを迎え、緊張感と寛ぎと美しさと生々しさに満ちた音空間が展開される。これこそ最もストーンに乗り込んだ甲斐があるといえる演奏ではないだろうか。この2セットが同日に続けて演奏されたのも凄い。ちなみに Disc 4 もエレクトロニクスと弦楽器が加わったコラボレーションで、イクエ・モリを除けばいつもの気心の知れた仲間との即興であり、好対照になっているのが面白い(むろん優劣はつけがたい)。6枚全部楽しかった!