あうとわ~ど・ばうんど

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今井和雄 / the seasons ill

ほうぼうで評判の良い作品をようやく聴く。

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The Seasons Ill

The Seasons Ill

今井和雄(g)


なるほど、これは凄まじい。Sightsong さんや zu-ja さんも同様の指摘をしているが、まるでただの白黒紋様が回転するや多彩な色を錯視させるベンハムの独楽のように、強靭な轟音・爆音・ディレイ・ノイズの中から、さまざまな(おそらくは)意図せざるイメージが奔流のようにあふれ、多層的な音楽が圧倒的スピードで展開されている。これがライブ録音である、という事実も凄い。

Jeremy Lirola - Uptown Desire

フランスのベーシスト、Jeremy Lirola の旧作を聴く。

Uptown Desire

Uptown Desire

Jérémy Lirola(b) Denis Guivarc'h(as) Jozef Dumoulin(p, rhodes) Nicolas Larmignat(ds)


ジャケからは、お洒落ジャズ、あるいは、おフランスのエスプリジャズ、の雰囲気も漂うが、ジャケ買いしたわけではない。お目当ては、変幻自在のキーボーディストであるヨゼフ・デュムランと、とても好きなタイプのアルトサックス奏者 Denis Guivarc'h(いまだに読み方がわからない)。もっとも冒頭に「お洒落ジャズ」と書いたが、それもあながち間違いでない。表面上はたしかにそう聴こえる部分はある。が、デュムラン、Guivarc'h とも、やっていることはなかなか変態だ。デュムランは最近の来日やたくさんの参加作で光が当たっているが、Guivarc'h の知名度が今一つ上がってこないのは残念だ。M-Base やスティーヴ・リーマンなどにも通じるアブストラクトなフレーズを、華麗に滑らかにクールに決めるアルトサックスはとても魅力的なのだが。


試聴

Arthur Blythe - Lenox Avenue Breakdown / In The Tradition / Illusions / Blythe Spirit

1ヶ月遅れのアーサー・ブライス追悼。

In The Tradition / Lenox Avenue Breakdown / Illusions / Blythe Spirit

In The Tradition / Lenox Avenue Breakdown / Illusions / Blythe Spirit

Lenox Avenue Breakdown :
Arthur Blythe(as) James Newton(fl) Bob Stewart(tuba) James Blood Ulmer(g) Cecil McBee(b) Jack DeJohnette(ds) Guillermo Franco(per)
In The Tradition :
Arthur Blythe(as) Stanley Cowell(p) Fred Hopkins(b) Steve McCall(ds)
Illusions :
Arthur Blythe(as) Abdul Wadud(cello) James Blood Ulmer(g) Bob Stewart(tuba) John Hicks(p) Fred Hopkins(b) Bobby Battle(ds) Steve McCall(ds)
Blythe Spirit :
Arthur Blythe(as) Abdul Wadud(cello) Kelvyn Bell(g) Bob Stewart(tuba) John Hicks(p) Amina Claudine Myers(org) Fred Hopkins(b) Bobby Battle(ds) Steve McCall(ds)


アーサー・ブライスがコロンビアに残した9枚のアルバムのうち、1980年前後、最初の4作品を2枚のCDにまとめた廉価盤。昨年、突然出た。「Lenox Avenue Breakdown」は今でもたまにCDを見るが、「Illusions」は大昔一度CD化されたきりで、残る2枚はもしかすると初CD化なのではないか。「レノックス」は昔ジャズ喫茶でよくかかったし、自分でもCDを持っていたものの、レコードの回転数を間違えたんではないかと驚く(という経験は実はないのだが)ようなブライスのこれ見よがしなアルトの音と、セシル・マクビーの時代を感じさせるぼよんぼよんベース、ジャズファンクとでもいうのか単調なリズムの持続には正直言ってすぐ飽きが来たのだけれど、今回初めて聴くそれ以外の3枚が良かった。「イリュージョンズ」はレノックス路線だがリズムやギターサウンドが進化して面白くなり、「イン・ザ・トラディション」や「ブライス・スピリット」のように比較的落ち着いてジャズを演奏しているのも、なかなかいい(むしろこういうほうがブライスの良さがよく出るのでは?)。見直した。残る5枚もまとめてはくれまいか。

Rudd - Lacy - Mengelberg - Carter - Bennink / Regeneration

最近出た Soul Note のリマスター再発。id:kanazawajazzdays さんが以前誉めていた盤。

Regeneration

Regeneration

Roswell Rudd(tb) Steve Lacy(ss) Misha Mengelberg(p) Kent Carter(b) Han Bennink(ds)


前半(A面)3曲がハービー・ニコルズ曲集、後半(B面)3曲がセロニアス・モンク曲集。ピアニストとしても作曲家としても異能の2人を取り上げているのは好もしいが、ロズウェル・ラッドは単に演奏の素材としてだけ(に聴こえ)、レイシーは曲へのフェティッシュが感じられるものの、ピアニストの感性と作曲家の思想を理解しているのは、やはり5人の中でミシャのみだろう。最終曲にエリック・ドルフィーLAST DATE」冒頭にも取り上げられた「Epistorophy」(どうでもいいが Eric Dolphy で韻が踏める)が演奏されているのが胸が熱くなる。

そういえば前述の id:kanazawajazzdays さんは「Last Date」におけるミシャ(とハン)について『鋭い音が生み出す奇妙なグルーヴ感』と呼んでいたけれど、たしかにあのアルバムを名盤たらしめているのはドルフィーだけではない。ミシャの貢献も大きく、ドルフィーはミシャのトリオを気に入って再共演が予定され、彼が急逝しなければ「ヨーロピアン・リズム・マシーン」あるいは「ヨーロピアン・カルテット」としてその後もコラボレーションが続けられたであろう(もしかするとその後のICPへの影響も多少は変わったかもしれない)ことは想像に難くなく、そんなことを言ってもしようがないのだろうがやはり痛恨事というほかない。

Wooley / Corsano / Yeh - The Seven Storey Mountain

というわけで、さっそく Nate Wooley の Seven Storey Mountain の「II」にあたる作品を取り寄せてみた。

Seven Storey Mountain

Seven Storey Mountain

Nate Wooley(amplified tp, tape) Chris Corsano(ds) C. Spencer Yeh(vln)


こりゃまたすごい。何がすごいって、たった3人にもかかわらず、倍の人数の「III and IV」とさして違わぬサウンドと世界観である。逆に言えば、この、とても3人でやっているとは俄かには信じがたい完璧なトライアングルを、なぜ敢えて拡大し続けなければならないのか、不思議なぐらいである。盛り上がり所はパワー系インプロなのに、手つきは最初から最後までクール、というのがこの作品でも徹底されていて、うーむかっこいいぞ。

Chicago Edge Ensemble - Decaying Orbit

こんなアルバムが出ていたとは知らなかった。


Chicago Edge Ensemble - Decaying Orbit (2017)
Dan Phillips(g) Hamid Drake(ds) Mars Williams(sax) Jeb Bishop(tb) Krzysztof Pabian(b)


いずれもシカゴ在住(らしい)ミュージシャンらによるアルバム。手練れたちがソロの凄みを聴かせる、というのではなく、和気藹藹としたセッションという感じ。したがってマーズが全曲にわたってキレッキレのサックスを聴かせる、という展開にはならなくて、むしろジェブ・ビショップが前面に出てきている印象だが、それでも時折フィーチャーされては全てを持っていくマーズがやっぱりさすがだなあ。

Nate Wooley - Seven Storey Mountain III and IV

あれからそろそろ4週になってしまう(早い!)けれど、Sightsong さんと id:zu-ja さんに会った『メモリアル』で買った、2人の激賞アルバム。実は先週のエヴァンより前に聴いて「こりゃすごい」と思っていたが、そんな語彙貧弱な感想以外の言葉も見つからず、毎日のように聴きながらも書くのは放置していた。


Nate Wooley - Seven Storey Mountain III and IV
Pleasure of the Text Records, 2016)
Nate Wooley(tp, amp, tape) C. Spencer Yeh(amplified vln) Ben Vida(electronics) David Grubbs(g) Chris Corsano(ds) Paul Lytton(ds) Ryan Sawyer(ds) Matt Moran(vib) Chris Dingman(vib) TILT Brass Sextet


感想は相変わらず「こりゃすごい」という間抜けなものだが、もう少し頑張って書いてみようか。プロジェクト名の「Seven Storey Mountain」というのは、アメリカのカトリック司祭で作家のトマス・マートンによる自叙伝「七重の山」から取られたものであろう(ということを、さっき検索して初めて知った。こういう本が200万部の大ベストセラーになるとはすごい)。ウーリーに宗教的動機はたぶんないと思うのだが、おそらくは自身の音楽的自叙伝みたいな位置づけなのではないか。

「Ⅲ」も「Ⅳ」も、静寂の中から(ヴァイブとドラムの違いはあるが)音が立ち上がり、アンプリファイされたヴァイオリンがエレクトロニクスのような(Ⅳには他にもエレクトロニクス奏者が入っている)ドローンのような響きを敷き詰め、やがて各楽器が徐々に過激さを増し、ウーリーによるサンプリングされた音楽なども差し挟みながら、実にドラマチックな音楽を展開して再び静寂へ帰っていく。過激に盛り上がっているときであっても、メンバーの醒めた科学者のような手つきがうかがえて、そのあたりもクールでかっこいい。

なおタイトルが「III and IV」であるからには当然「I」と「II」もあって、ともに Important Records から、「I」は「Seven Storey Mountain by Nate Wooley (2011-06-14)」、「II」は「Seven Storey Mountain」として出ている。「I」はウーリー~グラブス~リットン、「II」はウーリー~コルサノ~スペンサー、それぞれ異なるトリオだったというのも興味深い。また、「IV」からさらにメンバーを増やした「Seven Storey Mountain V」もリリースされている。他作品も聴いてみたい。