あうとわ~ど・ばうんど

Roligheten - Homegrown

前の2枚に比べれば小粒ではあるが。

Homegrown

Homegrown

André Roligheten(ts, ss, bcl) Adrian Løseth Waade(violin) Jon Rune Strøm(b) Erik Nylander(ds, perc)


「Roligheten」はグループ名でもあり、リーダーの名前でもあるが、このエントリを書き始める直前まで、この人の参加作をこれまでに3枚も取り上げていたことに全く気付いていなかったのは迂闊な限りであった。スモーキーでくぐもったサックスとヴァイオリンのアンサンブルが融和していて、郷愁を誘うような各曲想と相まって心地よい。14日の Cortex もそうだったけれど、最終曲に「Kathleen Gray」(from 「Song X」)をやっているからというだけでなく、オーネット・コールマンドン・チェリーのカルテットの影響をこれまた如実に感じさせるのが興味深い。

Der Verboten

f:id:joefree:20171016033017j:plain:w550
Der Verboten
clean feed, 2017)
Frantz Loriot(viola) Antoine Chessex(ts) Cédric Piromalli(prepared piano) Christian Wolfarth(perc, cymbals)


もともとはフランツ・ロリオとセドリック・ピロマリが、ミッコ・イナネンらを招いたグループに「Treffpunkt」と名付け、次に別の2人に差し替えたグループには Treffpunkt の日本語訳である「Kaijo(会場)」と名付け、たにもかかわらず、アントワーヌ・シェセックスらを招いた今回のグループには全く別のコンセプトによる名前が付けられている。のであるけれど、演奏されているのは「Der Dritte(3番目の) Treffpunkt」だそうである。ということはさておき、40分に及ぶこの演奏は素晴らしい。積水淵を成し大河に育つような、山あり谷ありドラマチックな即興音楽である。


試聴(このライブがそのままアルバムとしてパッケージされている)
www.youtube.com

Cortex - Avant-Garde Party Music

ようやく clean feed の新譜に取り掛かる。

Avant-Garde Party Music

Avant-Garde Party Music

Thomas Johansson(tp) Kristoffer Berre Alberts(sax) Ola Høyer(b) Gard Nilssen(ds)


クリストファー・アルバーツが参加する Cortex の CF から3枚目(通算5枚目)のアルバム。レーベル HP の解説でオーネット・コールマンドン・チェリーの影響を指摘する通り、今作のコンポジション(全曲がトランペットのヨハンソンの手による)はオーネット・カルテットふうである。けれど、演奏までそうかと言えばそんなことはなくて、アルバーツは相変わらずへしゃげた管を無理矢理吹いているような独特の魅力ある音色で、正統派ではありえない妙ちきりんなソロを吹き、ヨハンソンのトランペットもチェリーとは無縁の痙攣のようなフレーズ(ハンニバルを思い出す)を吹き散らかすが、「Party Music」の名の通り、体を自然に揺れさせるようなノリの良さも忘れていない。とはいえ、たしかにオーネットたちの音楽の自由さに対するリスペクトはしっかり感じ取れる気がするのだ。

Ornette Coleman - Ornette at 12 / Crisis

オーネット・コールマン60年代末、impulse! 時代の2作品が、ツーインワンで待望のCD化となっている。

ORNETTE AT 12/CRISIS

ORNETTE AT 12/CRISIS

Ornette At 12 : Ornette Coleman(as, tp, violin) Dewey Redman(ts) Charlie Haden(b) Denardo Coleman(ds)
Crisis : Ornette Coleman(as, tp, violin) Don Cherry(cor, indian fl) Dewey Redman(ts, cl) Charlie Haden(b) Denardo Coleman(ds)


Blue Note 時代と Columbia 時代の狭間とはいえ、なぜこの2作品がCD化されていなかったのか理解できない(もしかすると当時10代前半だったデナードのせいかもしれないが、悪くはないと思う。ちなみに彼は「Crisis」の後10年間、「Tales of Captain Black by James Blood Ulmer」の録音まで表舞台には出てこない)。内容的には「at 12」よりも、id:zu-ja さんがツイッターアイコンに使っている「Crisis」が圧倒的。5曲それぞれに個性が違っていて、しかも集合体としてのバランスも良く、スタジオに観客を入れた前作とは異なり正真正銘のライブアルバムのためか演奏も熱く、タイトルにあるような「危機」は微塵も感じない。

なお今月下旬には、続く Flying Dutchman 時代の「フレンズ&ネイバーズ(オーネット・ライヴ・アット・プリンス・ストリート) (日本初CD化、日本独自企画盤、解説付き)」も国内初CD化となるそうな。


試聴
www.youtube.com
www.youtube.com

Tyshawn Sorey - Verisimilitude

マット・ミッチェルと順序が逆になってしまったが、マッカーサー・フェロー(天才賞。ちなみに wiki の説明がひどい)受賞記念、というわけでもないが。

Verisimilitude

Verisimilitude

Tyshawn Sorey(ds, perc) Cory Smythe(p, toy piano, electronics) Chris Tordini(b)


これまで聴いてきたタイショーン・ソーリーの作品の中で、ジャズのアルバムとして最も腑に落ちた。という感じ。タイショーンにとって、かつてグループの一員として共演した菊地雅章の存在はやはり大きいのだろうなと推察する(しかない)わけだが、アンドリュー・ヒルとの組み合わせが実現していたらどんなに素晴らしい音世界が生まれただろうとも想像を膨らませずにおれない、そんな広がりや可能性も持った音楽、と聴いた。

それにしても最近聴いたアルバムの、タイショーン率のなんと高いことか。


試聴

Matt Mitchell - A Pouting Grimace

pi recordings の新作を聴く。(本来はその前に、何度も聴いたタイショーンの新作について書くべきであろうが)

A Pouting Grimace

A Pouting Grimace

Matt Mitchell(p, Prophet 6, electronics, compositions) Kim Cass(upright b) Kate Gentile(ds, gongs, perc) Ches Smith(vib, glockenspiel, bongos, timpani, gongs, tanbou, perc) Dan Weiss(tabla) Patricia Brennan(vib, marimba) Katie Andrews(harp) Anna Webber(fl, alto fl, bass fl) Jon Irabagon(sopranino sax, ss) Ben Kono(oboe, english horn) Sara Schoenbeck(bassoon) Scott Robinson(bass sax, contrabass cl) Tyshawn Sorey(conductor)


本作を蓮見令麻さんは『三次元的空間、サウンド・インスタレーションとして聞くのが最適ではないだろうか』と評していたが、なるほど、ジャケットの装幀がそれらしくメンバー各人ばらばらに見えて相当に複雑なルールを課され立体パズルのように組み合わさって音楽が形作られているように聴こえ、どの曲もどこかイビツで、そのイビツさが心地よい。とはいえ、私が聴きながら思っていたのは、いろいろな参照項が思い浮かぶことで、SF映画のサントラのように思えるのはまあよくある感想として、ときどきティポグラフィカのように聴こえることもあるし、クライムタイムオーケストラを思い出す時もあるし、アルバム最後のマットのエレクトロニクスはマイルス・デイヴィスライヴ・イヴル」のスタジオ作品を想起するといった具合で、ただしそれは別に欠点というわけでもない。いろいろと想像力や記憶力を掻き立ててくれる喚起力に富むということだ。

Butcher / Smith / Walter - The Catastrophe of Minimalism

8月17日に、ウィーゼル・ウォルターがドラムで参加するジョン・ブッチャーのコードレストリオ作品を9月に紹介すると書いたら、CDの発売日が1ヶ月延びてしまい、最近ようやく届いたのであった。

The Catastrophe of Minimalism

The Catastrophe of Minimalism

John Butcher(ss, ts) Damon Smith(b, field recordings, lloopp softwave) Weasel Walter(perc)


これがとても楽しいのだ! なにしろドラムがウィーゼル・ウォルターであるから、余韻や間などというものに一片の価値も認めないようにチャカポコと手数の多いパルスをたたき出し、デーモン・スミスのベースもギーコギーコと呻り軋み、ブッチャーのソプラノやテナーもいつになく非常に『饒舌』であり、そしてそしてフリージャズ的快楽にもあふれているという至れり尽くせりぶり。激しくおススメする。ちなみにCDは200枚の限定盤だそうで、スミスの主宰する Balance Point Acoustics レーベルから出ているが、ウォルターの ugEXPLODE Records からも買えるようになっている。


試聴
www.youtube.com