あうとわ~ど・ばうんど

THB Bootlegs Volume 5: Pop Songs

またいろいろあって、すっかりサボってしまっていた。THB こと Taylor Ho Bynum のオフィシャルブートレグ第5弾が出ている。


THB Bootlegs Volume 5: Pop Songs
THB Music, 2018)
Track 1: Composed by Prince, performed by Taylor Ho Bynum (cornet, arr) Kyoko Kitamura (lead vocals, p) Jim Hobbs (alto saxophone) Nick Lloyd (keyb) Evan Patrick (g, background vocals) Stomu Takeishi (elb) Abraham Gomez-Delgado (perc, background vocals) Pheeroan akLaff (ds), recorded Feb, 2013.
Track 2: Composed by Bjork, performed by Taylor Ho Bynum (cornet, arr) Marika Hughes (cello) Evan Patrick (g) Stomu Takeishi (b) Chad Taylor (ds), recorded Oct, 2016.
Track 3: Composed by THB, performed by the PlusTet, Nate Wooley (tp) Stephanie Richards (tp) Vincent Chancey (french horn) Steve Swell (tb), Bill Lowe (bass tb) Jim Hobbs (as) Ingrid Laubrock (ts) Matt Bauder (ts) Jason Kao Hwang (violin) Tomeka Reid (cello) Ken Filiano (b) Mary Halvorson (g) Jay Hoggard (vib) Tomas Fujiwara (ds) THB (composer, conductor), recorded Jan, 2016.


「ポップソング」と題されたアルバムに収録されている3曲は、1曲目がプリンスの曲、2曲目がビョークの曲、最後が自作曲という構成。なのだが、プリンスとビョークの元曲を知らないことが関係あるのかどうか、最後の自作曲が最も「ポップ」に聴こえるから面白い。そしてメアリーのピッチベンドギターは、ポップな曲想でこそよく映える。なおこの曲にはおそらくポップスかジャズの元ネタがあると思われるのだけれど、知識が欠如しているので全く見当つかない。ちなみにデューク・エリントンの『We Love You Madly』とは関係なさそうだ、たぶん。

Subtle Degrees / A Dance That Empties

皆がセシル・テイラーを偲んでいる夜に申し訳ないが、新譜を聴いている。

A Dance That Empties

A Dance That Empties

Travis Laplante (ts) Gerald Cleaver (ds)


ピーター・エヴァンスとのデュオ『Secret Meeting』(16年2月21日)や、無伴奏ソロ作品『Travis Laplante: Heart Protector』(11年12月21日)、あるいはダリウス・ジョーンズらとの狂暴カルテット「Little Women」、もしくはサックス四重奏グループ「Battle Trance」などで極めて印象に残るテナーサックス奏者のトラヴィス・ラプランテと、現代最高のドラマーの一人であるジェラルド・クリーヴァーによるデュオグループ。柔らかさと鋭さと豊かな倍音が同居したラプランテのテナーと、剛柔流ともいうべきクリーヴァーのドラムは相性抜群で、某ショップの煽りにあるような対決色より協調色が強い。聴きどころは何と言っても、いつも手垢のついた表現で恐縮だが、延々と繰り出されるラプランテのきりもみ奏法というか、クリーヴァーも含めて高速で万華鏡が回転するような煌びやかなサウンドである。いやあこれはいいなあ。


参考動画および試聴

Jonas Cambien Trio / We Must Mustn't We

We Must Mustn't We

We Must Mustn't We

André Roligheten (ss, ts, bcl, fl) Andreas Wildhagen (ds, perc, tp) Jonas Cambien (p, microtonal melodica) + Torstein Lavik Larsen (tp)


デビュー盤の前作『A Zoology of the Future』(16年6月7日)で、奇妙な味わいを残してくれたノルウェーのグループ、Jonas Cambien Trio の新作を聴く。前作のことをフリージャズのエッセンスを凝縮した「おもちゃ箱」や「動物園」に喩えたけれど、本作もハンドメイドのような(そんなわけはないのだが)開けて楽しい「我楽多箱」というイメージだ。


Sara Serpa - Close Up

中断していた Clean Feed の新譜に戻る。

Close Up

Close Up

Sara Serpa (voice, composition) Ingrid Laubrock (ts, ss) Erik Friedlander (cello)


メアリーの盟友の一人、イングリッド・ラブロックも時を同じくして女声ヴォーカリストと共演している。お相手はポルトガル出身のサラ・セルパ。彼女の抑揚や感情を極力排したようなフラットなスキャットヴォーカルは、嫌いでない。ラブロックも音の表情はともかく、声に寄り添うような涼し気なプレイで、フィードランダーの2人を包み込む懐深いチェロも相まって、なにやら室内楽的な心地よい響きがする。

Mary Halvorson - Code Girl

何度聴き返しても幾分かの戸惑いは残るものの、良いアルバムと思う。

Code Girl

Code Girl

Amirtha Kidambi (voice) Ambrose Akinmusire (tp) Mary Halvorson (g) Michael Formanek (b) Tomas Fujiwara (ds)


戸惑いの元はインド系ヴォーカリスト Amirtha Kidambi の存在であって、これがサックスであれば、メアリーの新クインテット(Thumbscrew + 2管)と言ってよいところだと思うが、このオペラのようなポップスのようなフォークのようなロックのような、カテゴライズを拒むかのような不思議な歌声が、聴後の微妙な居心地悪さを演出している。とはいえ、微妙な居心地悪さ、というのはメアリーのギターの特質なのでもあって、「Girl」2人の絡みこそがこの音楽の肝なのかもしれぬ。もちろんグループとしての即興的強度はやはりたいしたもので、メアリーのギターはこういうテンポでこそすごく映えるし、メンバーの中では普段のフィールドがやや異なるアキンムシーレの存在も新鮮だ。

Tim Berne / Matt Mitchell duo - Angel Dusk

ティム・バーンが FB でリリースを予告してから、一週間もたたずに発売された。


Tim Berne / Matt Mitchell duo - Angel Dusk
(Screwgun Records, 2018)
Matt Mitchell (p) Tim Berne (as)


以前、マット・ミッチェルのソロによるティム・バーン曲集というのが出ていた(昨年2月9日参照)が、やはりティムの曲をやるのならばティムのアルトが足りないのではないか、という私の心の(中だけの)叫びを聞き届けてくれたようだ。二色の釉薬が複雑に溶け合い重なり合った珠玉、を思わせる完璧なデュオ。そして、デヴィッド・トーンがミックス&マスターを手掛けたそうだが、ティムのアルトの音がこの上なく美味である、というのも再認識するしだいである。

『Christian Lillingers Grund / C O R』レビュー

『Christian Lillingers Grund / C O R』について、JazzTokyo 誌に寄稿しました。(2月23日参照)
jazztokyo.org