あうとわ~ど・ばうんど

Sakata Yermenoglou Di Domenico Damianidis / Hōryū​-​ji

坂田明さんの新作、CDが出るのは26日だが、デジタル版は既に入手できるようになっている。

Sakata Yermenoglou Di Domenico Damianidis / Hōryū​-​ji
el NEGOCITO Records, 2019)
Akira Sakata (as, cl, vo, bells), Christos Yermenoglou (ds, perc), Giovanni Di Domenico (p), Giotis Damianidis (g)


昨年5月、ギリシアのジャズクラブでのライブ録音。ローマ出身ブリュッセル在住ピアニスト、ジョバンニ・ディ・ドメニコは坂田さんとの共演が多く、ともに日本ツアーも行ったりしているが、ふたりの共演作はデュオ以外にも、ドラムとギター(ないしベース)を加えた作品がいろいろ出ている。本作はふたりでギリシアに赴き、現地のギターとドラムを迎えてツアーを行った、というところだろうか。冒頭から、坂田さんの引き締まったハードなアルトブロウが炸裂しており、わかっちゃいるけど大変心地よい。ディ・ドメニコのピアノは流石のコラボレーションをみせ、現地のドラムもしっかり対応している。対してギターは3人に合わせる気が有るのか無いのか、いやいや実はこれが絶妙な距離感で、サウンドを挑発し鼓舞しまくっている。いやー面白い人がいるもんだなあ。


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Art Ensemble of Chicago / We Are On The Edge: A 50th Anniversary Celebration

We Are On The Edge: A 50th Anniversary Celebration

We Are On The Edge: A 50th Anniversary Celebration

Art Ensemble of Chicago / We Are On The Edge: A 50th Anniversary CelebrationPi Recordings, 2019)
Roscoe Mitchell (sopranino, ss, as), Famoudou Don Moye (ds, congas, djembe, dundun, gongs, Congo bells, bendir, triangles, Thai bells, shakers), Moor Mother (Camae Ayewa) (voice, poetry), Rodolfo Cordova-Lebron (voice), Hugh Ragin (tp, flh, Thai bells), Fred Berry (tp, flh), Nicole Mitchell (piccolo, fl, bass flute), Christina Wheeler (voice, Array mbira, autoharp, Q-Chord, Moog Theremini, sampler, electronics), Jean Cook (violin), Edward Yoon Kwon (viola), Tomeka Reid (cello), Silvia Bolognesi (b), Jaribu Shahid (b, tuned brass bowls), Junius Paul (b), Dudù Kouaté (djembe, tama/talking drum, calabashes, kanjira, whistles, chimes, bells and small percussions), Enoch Williamson (bongos, congas, djembe, kenkeni, okonkolo, Congo bells, chekeré, shakers, tama/talking drum), Titos Sompa (vocals, congas, mbira, Congo bells, cuica, shakers), Stephen Rush (conductor)


何とも評しように困るアルバムである。簡単に言えば、AECの50周年記念アルバムなのだが、AECのアルバムではなく、AECをめぐるアルバム、とでも言うべきか。CDは2枚で、1枚目はオリジナルメンバーのロスコー・ミッチェルとドン・モイエを尊敬するAACM周辺の後輩たち(中には、かつて再結成メンバーとして『Non-Cognitive Aspects of the City: Live Iridium』に参加していたジャリブ・シャヒドもいる)が入れ代わり立ち代わり往年の名曲を演奏し、2枚目は1枚目に参加した面子から数人抜けたメンバーで行ったライブ、という構成。なのだけれど、これが果たして AEC のアルバムと言えるかどうかは、わたしの AEC 聴取体験が絶対的に不足しているため、よく分からない、というのが本心だ。ちなみに、2枚組全19曲でわたしの印象に最も残るのは、ロスコーが活躍する1枚目の『Chi-Congo 50』と、2枚目のライブの締めくくりである『Odwalla / The Teme』である。なお本作は7月に4枚組LPもリリースされる予定となっている(曲順は異なるが、CD全曲収録されるもよう。こちら参照)。

Christine Abdelnour / Chris Corsano - QUAND FOND LA NEIGE, OÙ VA LE BLANC?

続けて、クリス・コルサノ参加新作をもう一枚。

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Christine Abdelnour / Chris Corsano - QUAND FOND LA NEIGE, OÙ VA LE BLANC?
Relative Pitch Records, 2019)
Christine Abdelnour (as), Chris Corsano (ds, slide clarinet)


コルサノは同レーベルから、やはり女性アルトサックス奏者のメテ・ラスムセンともデュオアルバム(All The Ghosts At Once, 15年5月26日参照)を出しているが、本作の相棒であるクリスティーン・アブデルヌール(と私は読んでいるが、たぶん違うだろう)は、ほとんど特殊奏法に終始しており、つれてコルサノもあらぬ打音擦音や時にスライドクラリネット(スライドリコーダーみたいなものか?)で応酬し、結果として喧しくもめくるめく響きのショーケースとなっている。なんじゃこりゃ。凄く面白い。


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Baczkowski / Lopez / Corsano - Old Smoke

Relative Pitch Records の新作が届く。

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Baczkowski / Lopez / Corsano - Old Smoke
Relative Pitch Records, 2019)
Steve Baczkowski (saxophones), Brandon Lopez (b), Chris Corsano (ds)


Steve Baczkowski(どう読むのか?)はクリス・コルサノとよく共演しているサックス奏者だが、ほぼ風貌通りのヘヴィーなバリトンサウンドや、民族楽器のようにも聴こえるソプラノ(ソブラニーノかもしれない)に、時おり小技などもきかせつつ、胸たぎる暑苦しいプレイを聴かせてくれる。コルサノや若いブランドン・ロペスもさすがの対応力と一体感で、コルサノが参加する同編成の『ちかもらち』も斯くや、という痛快で爽快なフリージャズである。


参考動画(3人のみの映像がなかったので、Sam Yulsman が加わったもの)
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T. K. O. with 中島弘恵 / 猫の散歩 Live at 蓬莱音楽館

28日の Total Knock Out Orchestra vol.1 ライブ時に購入。

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T. K. O. with 中島弘恵 / 猫の散歩 Live at 蓬莱音楽館
(ピット゜, 2018)
立花泰彦 (b), 小山彰太 (ds), 奥野義典 (as), 中島弘恵 (p), + 橋本琢実 (as)


北海道を拠点に活動するミュージシャンによるトリオ、T.K.O. の2作目(前作は16年2月18日参照)。今回も全7曲で、前作に引き続き山下洋輔作『エレジー』が収録され、スタンダード『I'll Remember April』、中島作『ドラゴン・ダンス』を除いて、4曲がリーダー立花さんのオリジナル、という曲構成もほぼ同じ。CDの音源は17年11月、新ひだか町の蓬莱音楽館におけるライブ、とのことだが、前作も15年11月、同館での録音であった。アルバムは一曲目『おっと!』から最終曲『スカイ』まで、即興演奏やらノリの良い曲やら不安定な曲やら情感たっぷりの曲やらがバランス良く配置されている。中島さん(のピアノを実は、先日のライブでとっても久しぶりに聴いたのだが、すごく良かった)はクレジット上は全曲ゲスト参加扱いだが、最近のライブにはほとんど参加しているそうで、完全にバンドサウンドと一体化している。前作より気に入った。

François Carrier / Alexander Hawkins / John Edwards / Michel Lambert - Nirguna


François Carrier / Alexander Hawkins / John Edwards / Michel Lambert - Nirguna
Fundacja Słuchaj, 2019)
François Carrier (as), Alexander Hawkins (p), John Edwards (b), Michel Lambert (ds)


フランソワ・キャリリール(と読むらしい)のアルトサックスは、どちらかといえば好みではないほうの部類なのだが、このアルバムはすごく良い。というのは、アレクサンダー・ホーキンスによるところが非常に大きい。この1981年英国生まれのピアニストは最近とみに参加作が増えているが、フリージャズピアノの中に、アーリージャズから現代ジャズまで程よく消化した豊饒な『ジャズの薫り』を感じさせてくれ、日本で言えば、スガダイローさんのようなすごいピアニストではないかと思われる。アルバムにおける演奏を聴くと、フリージャズもメインストリームジャズもクロスオーヴァーも同居した70年代のジャズのような感覚と強度を覚える。


参考 フランソワ・キャリリール・インタビュー:jazztokyo
jazztokyo.org

Gauci ​/ ​Ewen ​/ ​Lane ​/ ​Shea - Live at the Bushwick Series

ニューヨークの中堅テナーサックス奏者、ステファン・ガウチが自主レーベルを立ち上げ、自作を含む3作品をリリースした。うちの一枚。


Gauci ​/ ​Ewen ​/ ​Lane ​/ ​Shea - Live at the Bushwick Series
gaucimusic, 2019)
Stephen Gauci (ts), Sandy Ewen (g, electronics), Adam Lane (b), Kevin Shea (ds)


ガウチバイオグラフィーに目を通すと、子どものころに聴覚障害だか難聴だかだったそうで、それが彼のテナーサックスのトーンに影響しているとのことだが、たしかに、ひしゃげた管から無理矢理絞り出すような、密度濃く、独特な、いい音である。サンディー・ユエンは座って膝に置いたギターから金属ノイズ音をまき散らし、先ごろタリバム!で来日したケヴィン・シェイのドラムはリズムと言うよりパルスの波を叩き出し、アダム・レーンはひたすら速足で駆け抜けるようにベースを掻き毟り、皆、デコボコした山道の障害物をせわしなく飛び越えたり時折なぎ倒していくような演奏で、しかしやはりガウチのコク深いテナーサックスの音に常に耳奪われる。

なおレーベルの他作品には、ベテランピアニスト、クーパー・ムーアとガウチのインプロデュオ作品「Studio Sessions Vol. 1」も出ており、こちらも滋味深い。もう一枚にガウチは不参加だが、クリス・ウェルカム(g), カーク・ナフケ(cor), ジェイミー・ブランチ(tp), サム・ワインバーグ(ts), ベン・ガースタイン(tb), マイク・プライド(ds) といった猛者たちが名を連ねたオクテットである。