読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

板橋文夫 FIT! + MARDS / Alligator Dance 2016

新譜 板橋文夫 纐纈雅代 高岡大祐 後藤篤 瀬尾高志

板橋文夫 FIT! の新作を聴く。

f:id:joefree:20161205024921j:plain
板橋文夫FIT! + MARDS / Alligator Dance 2016
(Mix Dynamite, 2016)
板橋文夫(p, per) 瀬尾高志(b, per) 竹村一哲(ds, per) 類家心平(tp) 纐纈雅代(as) 後藤篤(tb) 高岡大祐(tuba) レオナ(tap dance)


前作「みるくゆ」(15年11月12日参照)のメンバーに高岡大祐氏と後藤篤氏が加わり、「FIT!」以外のメンバーたちには「MARDS」というユニット名が割り当てられているが、これは「FIT」と同様に構成員の頭文字となっているようだ。全11曲、「Alligator Dance」や「For You」などの板橋さんのオリジナルたちはもちろん、纐纈さんの泣き節が炸裂する彼女のオリジナル「天岩戸」も、「Free Size」(3日参照)でも2度演奏されていた後藤氏の「GRAND OPEN」も、「オーソレミオ」も、全てひっくるめて板橋さんのジャズになっている。汲めども尽きぬ熱い音楽の奔流に身をさらしていると、日常生活の中で忘れてしまっていたような、さまざまな感情や記憶が引き出される心地がしてくる。ああしかし日曜の夜にこういうの聴いてしまうと、「里心」がついてしまって、あした会社に行きたくないよー。

後藤篤 カルテット - Free Size

新譜 石田幹雄 後藤篤

猛吹雪の地への出張から帰ったら届いていたので、聴いて温かい気持ちになった。

Free Size

Free Size

後藤篤(tb) 石田幹雄(p) 岩見継吾(b) 服部正嗣(ds)


後藤篤氏は「トロンボーンの『ええとこ』をすべて兼ね備えているひと」だというのが、田中啓文さんのだが、私も概ね同意する。ちなみに全面的にでなく「概ね」なのは、一部不同意なわけではなくて、私にジャズトロンボーンのちゃんとした評価軸が存在しないからという留保である。収録それぞれの曲想にぴたり合った精妙なトロンボーンソロもさることながら、ピアノトリオになった瞬間、飛びだしてくる幹雄のイビツな才気溢れるソロがまた刺激的。

John Butcher, Thomas Lehn, Matthew Shipp - Tangle

新譜 John Butcher Matthew Shipp


John Butcher, Thomas Lehn, Matthew Shipp - Tangle
Fataka, 2016)
John Butcher(sax, feedback) Thomas Lehn(analogue synthesizer) Matthew Shipp(p)


ジョン・ブッチャーとマシュー・シップの共演は、近年における最大の事件の一つであり、そしてそれ以上に、二人の相性が実はとても良いことが素晴らしい発見の一つでもあった。本盤は、デュオ作品(13年4月17日参照)が吹き込まれた2010年のバレンタインデーから4年と5日後、場所も同じロンドンの Cafe Oto におけるライブである。今回はアナログシンセのトーマス・レーンが加わっているが、二人に伍しているというより、二人のコラボレーションの強化に奉仕しているように聴こえてしまう僻目は許してもらいたい。ブッチャーとシップ、サウンド全体に及ぼす影響という面では、どちらかといえばシップの重力圏が強い(まあこれは単に個性の違いでしかなかろうが)と感じられ、その結果として、大変上質な「ジャズ」に聴こえるわけである。


参考動画(録音当日の映像)
www.youtube.com

Evan Parker - Daunik Lazro - Joe McPhee / Seven Pieces

新譜 発掘 Evan Parker Joe McPhee

Clean Feed の新譜、今回は4枚を購入。最後にこれを聴く。

Seven Pieces: Live at Willisau 1995

Seven Pieces: Live at Willisau 1995

Evan Parker - Daunik Lazro - Joe McPhee / Seven Pieces - Live at Willisau 1995
Evan Parker(ts, ss) Daunik Lazro(as, bs) Joe McPhee(as, ss, alto cl, pocket tp)


完全な新作というわけではなく、21年前の1995年、スイスはヴィリザウにおけるライブの発掘音源らしい。フランスの Vand'Oeuvre レーベルから出ている「Joe McPhee & Evan Parker & Daunik Lazro」の6日後の演奏ということになる。もっともそちらは未聴なので比較できないのは残念だが、7曲(というより、タイトルに倣って7つのピースというべきか)全54分は、響きを重視した繊細でクールな即興演奏、といった印象で、熱を帯びる時間も当然あるが、冷たい炎を燃やしているような、とでも言えばよいだろうか。トリオだけでなく、デュオやソロにも時間が割かれ、エヴァンの錐揉ソプラノソロもありますぞ。


試聴
open.spotify.com

Mark Dresser Seven - Sedimental You

新譜 Mark Dresser Marty Ehrlich Nicole Mitchell Jim Black

引き続き Clean Feed の新譜。

Sedimental You

Sedimental You

Mark Dresser Seven - Sedimental You
Nicole Mitchell(soprano fl, alto fl) Marty Ehrlich(cl, bcl) David Morales Boroff(violin) Michael Dessen(tb) Joshua White(p) Jim Black(ds, per) Mark Dresser(b)


本盤のリーダーであるマーク・ドレッサーや、ほかにウィリアム・パーカーなどが典型例だが、いわゆるフリー系セッションで重用されるベーシストが自己名義グループでアルバムを発表すると、それらのセッションに対してなぜか(だから、というべきか)比較的オーソドックスな形の音楽となることが多い。ように感じる。本作も構成員数のわりに、というか楽器編成のせいなのだろうが、チェンバー風味のするジャズである。一聴すると地味だな、とか、散漫だな、という感想を抱いたのだが、地味と映ったのは、分かりやすい刺激にしか反応できなくなった私の鈍感さの表れであり、散漫に聴こえたのも、集中力の足りない私の脳内の反映にすぎぬのであって、聴き進めるうちにやがて、マークのベースを中心として彼の引力圏で衛星のようにメンバーたちがさまざまな軌道を描く音楽に収束していく感覚を覚えるのだった。


参考動画
www.youtube.com
www.youtube.com

試聴
open.spotify.com

Dre Hocevar - Transcendental Within the Sphere of Indivisible Remainder

新譜 Mette Rasmussen

Clean Feed の新譜を続けて聴く。

Transcendental Within the Sphere of Indivisible

Transcendental Within the Sphere of Indivisible

Dre Hocevar - Transcendental Within the Sphere of Indivisible Remainder
Sam Pluta(live electronics, signal processing) Aaron Larson Tevis(tp) Bryan Qu(sax) Mette Rasmussen(sax) Jeremy Corren(p) Zack Clarke(syn) Lester St. Louis(cello) Henry Fraser(b) Dre Hocevar(ds, interaction)


今年クリス・ピッツィオコスを擁した「Collective Effervescen」(2月7日参照)で興奮させてくれたドレ・ホチェヴァーが、今度はメッテ・ラスムッセンを擁するグループで新作をリリースした、とあれば聴かずばなるまいと思い購入。目当てのメッテは中盤以降、期待通りに活躍してくれて(ついでに、もう一人のサックスであるブライアン・キューもなかなか)満足したが、48分間続く演奏のうちメッテ登場まで20分近く待たねばならず、それまでとても長く感じた。というのは、序盤にサム・プルタが大活躍してくれたおかげで、申し訳ないが私は彼のエレクトロニクスがやはりとても苦手だということが分かった(前作のフィリップ・ホワイトには苦手意識はないので、エレクトロニクス自体がダメというわけではないのだ)。


試聴
open.spotify.com

参考動画(メッテとサムが参加していない)
www.youtube.com

Eve Risser White Desert Orchestra - Les deux versants se regardent

新譜 Eve Risser

Clean Feed に直接注文していた新譜が届いた。まずはこのアルバムから聴く。

LES DEUX VERSANTS SE R

LES DEUX VERSANTS SE R

Eve Risser White Desert Orchestra - Les deux versants se regardent
Eve Risser(p, prepared p, composition, vo) Sylvaine Hélary(fl, afl, bass fl, piccolo, vo) Antonin-Tri Hoang(as, cl, bcl) Benjamin Dousteyssier(ts, bass sax) Sophie Bernado(bassoon, vo) Eivind Lønning(tp, piccolo tp) Fidel Fourneyron(tb) Julien Desprez(elg, electro-acoustic guitar) Fanny Lasfargues(electro-acoustic bass guitar, vo) Sylvain Darrifourcq(ds, per)


一昨年のメールスフェスティバル(のストリーム中継)で、何気なく観ていたらいつの間にか惹き込まれ、その感動的なステージが印象的だった Eve Risser の White Desert Orchestra が、満を持してのニューアルバムリリースである。メールスでは終盤、コーラス隊が大挙しての大合唱となったような記憶がある(「印象的だった」と言っておきながら、実は曖昧である)が、本作は10人編成のオーケストラのみによる演奏だ。

「White Desert」というのは、てっきり雪原か何かの比喩だろうと勝手に思い込んでいたのだが、文字通り白い砂漠のことであって、リーダーの Eve Risser がそうした風景を念頭に作ったとおぼしきオリジナル8曲と、Eve も参加した「Orchestre National de Jazz (ONJ) Shut Up And Dance」(11年1月24日参照)で演奏されていた John Hollenbeck の「Shaking Peace」が収録されている。

オーケストラとしての作曲のあり方のコンセプトは統一されているようであるが、アルバム全体のコンセプトとしては統一されているような統一されていないような感じで、さまざまな曲想が味わえる。フィーチャーされているソロイストたちも、時に曲のムードを食い破ろうとするかのようなアグレッシブなソロを取ることがあるが、それがまた逆に曲のムードの補強にもなっていて、リーダーの作曲や構成の巧みさにも感心する。


試聴

open.spotify.com