あうとわ~ど・ばうんど

gravity - gravity

最近偏愛しているドイツのギタリスト Hannes Buder の新作が届く。


gravity - gravity(2017)
Hannes Buder(cello, composition) Andrew Lafkas(b) Hannes Lingens(ds)


なんと今回はギターでなく、チェロを弾いている。しかもギターでのエクスペリメンタルなプレイとは打って変わって、抒情味豊かなしっとりしたチェンバージャズになっているから驚いてしまう。作曲の才もたいしたもので、これはうれしい、新たな一面を知れて良かった。今後も大いに期待している。


参考動画
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試聴
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Nate Wooley - Battle Pieces 2

Nate Wooley「Battle Pieces」の続編が届く。


Nate Wooley - Battle Pieces 2
Relative Pitch Records, 2017)
Nate Wooley(tp) Ingrid Laubrock(sax) Matt Moran(vib) Sylvie Courvosier(p)


一昨年の前作と同様、静的でジリジリするような即興音楽。今回もライブ録音(ただし舞台は米国からドイツに移っている)だが、やはりそうした雰囲気をあまり感じさせない。前作は「Battle Pieces Ⅰ~Ⅳ」の4曲(プラス別の3曲)が収録されていたけれど、本作は前作最終曲である「Battle Pieces 4」から始まって「7」まで4曲が演奏されており、連作集の体裁となっている(しかしアルバムタイトルが「Battle Pieces 2」というのは紛らわしい。曲としての「2」は演奏されていないのだから)。前作と比べてさらに抽象度が高い印象だけれど、前作よりは腑に落ちるというか、とてもすんなり心にしみてきて、アルバムの進行とともに静かな興奮がじわりじわり積み重なっていき、ある瞬間、スタンプカードにスタンプが溜まりきって突然価値が生まれるような、という比喩は拙すぎるので言い換えよう、堤防を越えて水が押し寄せてくるような、興奮が一気に高まるのを覚えた。


参考動画(録音翌日のライブ)
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James Blood Ulmer with The Thing - Baby Talk

期待通りだった(あるいは超えている)のは、こちら。

Baby Talk

Baby Talk

James Blood Ulmer(g) Mats Gustafsson(ts, bs) Ingebrigt Håker Flaten(elb, b) Paal Nilssen-Love(ds, per)


いまや逐一追い駆けることをしなくなってしまった The Thing だが、ウルマーとの共演なら興味津々だ。The Thing にはさまざまなコラボレーション作品があって、とくにギターをゲストに迎えたアルバムが多いわけだけれど、これはかなり異色で、だけど出色と言えるのではないか。演奏されているのはどれもウルマーの曲で、彼のギターはほとんど屹立者のよう、というか、サウンドに奉仕しても先導してもない(ように見える)のに、Thing の3人がどんなに暴れまくろうと全てはウルマーの掌の上にあって、音楽全体をしっかりコントロールし、支配している。いやあやっぱりレジェンドは凄いなあ。楽器は違えどオーネットの正統な後継者なのだ、と実感する。


参考動画
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Boneshaker - Thinking Out Loud

Thinking Out Loud

Thinking Out Loud

Mars Williams(reeds, toys) Paal Nilssen-Love(ds, perc) Kent Kessler(b)


期待したほどでなかった、というのが正直なところ。前二作とは異なった毛色を打ち出そうとしたのかどうか、選曲にパワーダウンが否めず、マーズのブチ切れ度も足りない。うーむ残念だが、こんなこともある。マーズを追いかけ続けていく方針に変わりはない。今でも彼は、一度生で拝んでみたい未来日ミュージシャンの第一位である(ちなみに、PBB も同率一位)。


参考動画(今年のライブ)
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藤井郷子カルテット / ライブアットジャズルームコルテス

7月のライブ時に買い漏らしていたアルバム。

ライブ・アット・ジャズ・ルーム・コルテス (CSJ0005)

ライブ・アット・ジャズ・ルーム・コルテス (CSJ0005)

太田惠資(violin, vo) 田村夏樹(tp, vo) 藤井郷子(p) 井谷亨志(ds, perc)


昨年12月のライブ。いやあしかしこれは、なんというか、素晴らしいなあ、というしかない。太田氏の謎エキゾチシズムというか不思議ノスタルジーというか、中東のような中央アジアのような東欧のようなケルトのような南米のような、その実どこでもない国のエスニック風味がスパイスとなって、あるいは触媒となって、ここで展開される即興音楽のムードを支配している。そして太田氏のヴァイオリンや声表現はもちろん、藤井さんのピアノも、田村氏のトランペットも、井谷氏のドラムも、4人が合わさった空間も、それぞれハッとするほどに美しく、豊かだ。

本田珠也トリオ / セカンド カントリー

セカンドカントリー

セカンドカントリー

本田珠也(ds) 守谷美由貴(as, ts) 須川崇志(b) 峰厚介(ts)


ken さんの記事を読んで購入した、のではなく、記事公開時点では既に注文済で、抱き合わせ商品の関係で最近届いた(記事をきっかけに購入したことにしても全く差し支えはないのだが、まあ正確を期して)。ライナーノートではリーダー自身が、彼のドラミングそのもののような熱い文章を書いているのだけれど、エルヴィン・ジョーンズのコードレスサックストリオを念頭に置きつつ、“日本独自の日本のジャズ”を追求した作品、ということのようで、本田氏のドラムは前述のエルヴィンのような粘り気と厚みに満ちていて、守谷さんのアルト(およびテナー)はライナーが指摘するような“栄ちゃん節”も聴かれるがむしろ師匠の土岐氏の節回しの影響が濃いような端正さと蛮性を発揮しており、須川氏のベースは夫婦の熱さにあてられることなく気持ちの良い音色でズンズン進んでいく。

ken さんは「1970年代の日本のジャズのアルバムのようだ」と感想を書いていたが、わたしはというと「中央線ジャズ決定盤101 (CDジャーナルムック―SUPER Disc SELECTION)」に載っているようなジャズ(ライナーノートが言う所の「蛇頭」)の薫りを感じた。そういえばわたしがこうしたジャズを聴き始めたのは90年代前半のことで、本田氏のプレイを初めて観たのもそのころだったと思うが、「ザ・北海道バンド」という高橋知己氏・元岡一英氏・米木康志氏ら北海道出身者を中心としたグループでその姿に接したのだった(本田氏は出身者ではないが、初代ドラマーが道産子の小山彰太氏であった以降は、故セシル・モンロー氏、本田氏となぜか非北海道出身者に交代し、それぞれ3枚のアルバムを残している)。

ここからは大変失礼な思い出話になってしまって申し訳ないのだが、この時のライブの打ち上げで若き本田氏が先輩方そっちのけで隣に座った女性と話し込んで別席に移り、やがて高橋氏らが本田氏の元に行って挨拶をして帰っていったのを見てから、プレイとは関係のない良くない印象を持っていて、新しい世紀に入ってしばらく経つまで本田氏のドラムの真価に気づかなかったのは恥ずかしい限りである。しかし今回のトリオアルバムを聴いて、本田氏が日本のジャズをしっかりと血肉にしていたこと(おそらく北海道バンドの経験も糧になっているのだろう)に今度は好感を持ったのだった。


参考動画
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梵人譚

坂田明さんの新作も、さらにもう1枚出ている。

梵人譚(Bonjintan)[DPCD-0006]

梵人譚(Bonjintan)[DPCD-0006]

坂田明(as, vo) Giovanni Di Domenico(p) Jim O'Rourke(b) 山本達久(ds)


今年1月、新宿 PIT INN でのライブ。懐かしの「Dance」に始まり、ライブで耳にしたことがある気がするもののアルバム化はもしかしたら初かもしれない「農作業」、おなじみの「音戸の舟歌」を経て、「Lonely Woman」で締めくくる、選曲は鉄壁の布陣。坂田さんにはやっぱりこういう、独特のリズムを持った曲や胸を掻き毟らずにいられないような“歌”での、一気に沸点まで持っていくようなブロウがよく似合う。うーむ、やっぱりライブが観たくなってきてしまった(が、メンバーは違う・・)


参考動画(6月のライブから「Dance」)
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