あうとわ~ど・ばうんど

Catherine Sikora and Brian Chase / untitled: after

Untitled: After

Untitled: After

Catherine Sikora (ts, ss), Brian Chase (ds)


キャサリン・シコラの新作を聴く。彼女の音楽を聴くのは Relative Pitch からの無伴奏ソロ作品「SIKORA, CATHERINE - Jersey (1 CD)」に続き2枚目。彼女のサックス演奏はエヴァン・パーカーの影響を受けているそうで、「Jersey」も様々な響きや倍音の実験が行われていたものの、全体に小ぢんまりと『閉じている』と感じたので、本ブログではスルーしていた。しかしデュオである本作はブライアン・チェイスのドラムが触媒となり、彼女自身のやっていることはソロの時とそう変わらぬのかもしれないが、『開かれた』印象となるのだから不思議なのものである。


参考動画
www.youtube.com

試聴

Barker Trio / Avert Your I


Barker Trio / Avert Your I
Astral Spirits, 2018)
Michael Foster (ts, ss, electronics) ,Tim Dahl (b), Andrew Barker (ds, synth, electronics)


マイケル・フォスターが参加する Barker Trio の新作を聴く(グループとして既に何枚もアルバムを出しているが、聴くのは初めて)。「別冊ele-king カマシ・ワシントン / UKジャズの逆襲 (ele-king books)」の NY ジャズ特集において、フォスターのフィーチャー盤として彼が特殊奏法を駆使する「Leila Bordreuil & Michael Foster ?- The Caustic Ballads」をレビューしたけれど、彼の魅力はそれだけではないことを書き忘れていた。ここで聴かれるように、野太い音で猛り震え咆え狂いまくる彼の『フリージャズサックス』もまた、大変に心地よく魅惑的なのである。


参考動画(フォスターはけっこう動きが大きい)
www.youtube.com

Ryoko Ono - Yong Yandsen / Eryu


Ryoko Ono - Yong Yandsen / Eryu
Off, 2018)
Yong Yandsen 杨延升 (ts), Ryoko Ono 小埜涼子 (as)


小埜涼子さんの NEWDUO シリーズ(006)に続き、ベルギーの Off レーベルからもヨン・ヤンセンとのデュオが出ている。テナーとアルトの違いはあれど、シリアスなものからユーモアを感じさせる演奏までバラエティー豊かに、共通の感性を持つ双子によるデュオというイメージだ。


なお小埜さんといえば、ブログを休んでいた間にも、自作楽器演奏家とのデュオアルバム「RyokoSam / Gold​-​cut Square Voice」を聴いていて、アルトの心地よい音が全編にわたって鳴りまくっている傑作であった。

Ingrid Laubrock / Tom Rainey - Utter

イングリッド・ラウブロック(長く「ラブロック」と表記してきたが、ある動画で彼女自身が「u」をわりと強めに発音していたので、こう表記する。余談だが、彼女と共演歴のある吉田野乃子さんは「イングリッドちゃん」と呼ぶ)に直接注文していたCDが届く。

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Ingrid Laubrock / Tom Rainey - Utter
Relative Pitch Records, 2018)
Ingrid Laubrock (ss, ts), Tom Rainey (ds)


デュオ作品としては、このレーベルから3枚目、ということになる。元来このデュオはインプロのみを演奏していたのだが、16年ごろからコンポジションにも取り組み始めたそうで、3曲目の「Chant Ⅱ」はラウブロック作、冒頭の「Flutter」と最終曲「Shutter」は2人の作曲作品だそうである(おそらくタイトルは、ここから来ている)。とはいえインプロだろうとコンポジションだろうと、わたしはラウブロックのベルベットを思わせる肌ざわりよく温かく豊かな音に包まれながら、アルバムの最初から最後までを心地よく過ごすだけなのだが。

Sean Moran - Sun Tiger

Skirl Records の新作が届く。

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Sean Moran - Sun Tiger
Skirl Records, 2018)
Sean Moran (g), Hank Roberts (cello), Vinnie Sperrazza (ds)


大愛聴盤である「Hank Roberts / Green (Spkg)」(08年4月15日12月30日参照)と同じ編成であるのを見て、試聴も下調べもせずに購入したのである(レーベルに注文したが、Sean Moran が送ってきた)。「Sun Tiger」というタイトルはバンド名でもあり、ギターのシーン・モランがリーダーのようだ(作曲は全曲、モランが担当)。「Green」はマルク・デュクレとジム・ブラックという手練れを従えながらどこかフォーキーな作風だったけれど、本作はロック色が強めで、ロバーツのヴォーカルチューンもない。が、大地に根を張ったような独特の叙情を醸すロバーツのチェロは、やっぱりいいのだなあ。

Kaoru Abe / Sabu Toyozumi - Mannyoka

NoBusiness Records からの発掘新譜を聴く。

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Kaoru Abe / Sabu Toyozumi - Mannyoka
NoBusiness Records, 2018, 1978)
阿部薫 (as, ss, sopranino), 豊住芳三郎 (ds, perc)


阿部薫が死去した1978年の音源。音質は悪くない(良くもないが)。
わたしは阿部薫というと、どうしても屹立者として、だれと共演しても相手を叩き潰すような演奏をする人、というイメージが染みついてしまっている(たぶん「解体的交感」のせい)のだが、共演者を認めてきちんと「合奏」を成立させている音楽も多いのも事実。この年の豊住芳三郎とのデュオもそうで、死の前月の8月に録音された「オーヴァーハング パーティー」へと至る前の、1月と7月の音源がこのアルバムだ(LPヴァージョンは、うち1月の音源がピックアップされている)。静的な演奏場面はもう少し音がよければ…などとも思ってしまうが、多くを占める凄絶な演奏の前では些細な問題にすぎない。発掘経緯はよく分からないが、よくぞ出してくれました、という一枚。

Mary Halvorson / The Maid with the Flaxen Hair

メアリーの新譜が立て続けに届いた。

Maid With The Flaxen Hair

Maid With The Flaxen Hair

Mary Halvorson (g), Bill Frisell (g)


ビル・フリゼールとのデュオだが、契約上の関係なのか正式タイトルにビルフリの名はない。Tzadik の new SPECTRUM シリーズの24枚目にあたり、テーマはジャズギタリストのジョニー・スミス。ベンチャーズの「急がば廻れ」の作曲者として知られ、同曲もアルバム最後に収められている。収録曲はほかにも、全てスミスの作品からのセレクトで「ヴァーモントの月」(スタン・ゲッツとの共演が有名)、アルバムタイトルでもある「亜麻色の髪の乙女」(ドビュッシー作。ジャケもこれにちなむ)、「真っ赤なリボン」、「ニアネス・オブ・ユー」、「愛しい人の髪は黒」、「オールド・フォークス」、「ミスティ」など計10曲(タイトルに「髪」が含まれる曲が多い)。演奏はというと、これがとても Tzadik のアルバムとは思えないような(?)至極高尚なジャズギターデュオであって、メアリーは尊敬するアイドルを引き立てつつ、でもそこかしこでやっぱり音を揺らめかせている。しかし今の彼からは信じられなくなりつつあるが、フリゼールも30年前はこのレーベルでノイズの洪水を振りまいていたのだけれどねぇ(笑)。