Tom Weeks / Mort à crédit: Alto Saxophone Solos 2017
ここ数週間、何を聴いても耳を素通りするばかりだった(理由は自分なりに分かっている)が、久しぶりに心をとらえたのがアルトサックスの無伴奏ソロだったという事実は、わたしの或る一側面を表しているのかもしれない。
Tom Weeks / Mort à crédit: Alto Saxophone Solos 2017
(Wolfsblood Records, 2018)
Tom Weeks (as)
トム・ウィークスは、米国サンフランシスコ・ベイエリアの作曲家、即興演奏家、サックス奏者。バークリー音大でジャズ作曲の学士号を取った後、ミルズ大で作曲の修士号を得たといい、ロスコー・ミッチェルやフレッド・フリス、ジーナ・パーキンスなどに学んだ(と、バイオグラフィーには書いてある)。
アルバムは全12曲。引き攣るような高音やら、多彩な異化音やら、腿を使って音をミュートさせる手法やら、マウスピースで遊ぶ芸やら、ジョン・ゾーンがマサダ系フレーズを吹くときのような感覚を覚える個所も多々あって、確実に影響を受けているだろうと思われるのだが、多様多種の拡張テクニックを駆使しつつも、どこまでも瑞々しく美しい音そのものが、わたしの耳をつかまえて離さない。
なお、既にお気づきの方もいると思うが、タイトルの『Mort à crédit』とは、フランスの小説家ルイ・フェルディナン・セリーヌの『なしくずしの死』、すなわち阿部薫の有名アルバムと同じであり、それが念頭に置かれてるのは間違いない、と確信させる演奏でもある。今後、当ブログでは彼のことも推していこうと思う。