あうとわ~ど・ばうんど

スガダイロー / 季節はただ流れて行く

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スガダイロー / 季節はただ流れて行く
VELVETSUN PRODUCTS, 2018)
スガダイロー (p)


石田幹雄が傑作ピアノソロアルバムを発表した(3日参照)ばかりだというのに、スガダイローまでが傑作ソロピアノアルバムをリリースした。ジャケットがなぜ宮沢賢治風なのかは謎だけれど、「暦」をテーマに毎月1曲ずつ一年を費やし作曲した作品群だそうで、『花残月』(4月)から『花見月』(3月)までの12曲と、最終曲『海は見ていた』の計13曲の短編集、といったおもむき。石田作品が音を削ぎ落した極限の美の世界だったのに対し、スガ作品は、曼荼羅とか万華鏡とかいつも彼のピアノをわたしは評しているが、空間が勿体ないとばかりに音と響きで満たし(ているばかりでもない)しかしながら危ういバランスの上に成り立った、これもやはり極限の美の世界である。石田を菊地雅章渋谷毅に、スガを山下洋輔佐藤允彦に擬すのは安直であろうが、作風としては対称的ながら、これまた美しく可憐で瑞々しくシンプルで温かく思索的で気高く耽美的で儚く聴くものの人生にそっと寄り添うアルバムである。(ところで12曲目『花見月』は、「Summer Lonely」(1月1日17年11月28日参照)では『花水月』とクレジットされていたが、本作の表記が正しいそうである)

なお本作品は譜面も販売されている。