あうとわ~ど・ばうんど

川下直広カルテット / 初戀

評判の高い新作をようやく聴く。

初戀

初戀

川下直広(ts) 山口コーイチ(p) 岡村太(ds) 不破大輔(b)


川下さんのテナーは音といい、歌い方といい、一聴してすぐそれと分かる。そのテナーでジャズやらポップスのカバーやらを、格調という言葉など知らないのか、あるいは忘れたのか、もしかすると最初から持ち合わせていないのか(いやある意味、とっても格調高いのだけれど)、淡々と、ともすると朗々と、時には轟々と、そして切々と歌い上げていく。玉置宏浜村淳の前口上でも聴こえてきそうな、いわば演歌である。もしくは艶歌である。あるいは怨歌である。もしかすると炎歌かもしれない。他のメンバーも、この深く熱くエグく重く優しい音楽に奉仕している。カルテットの4人は平均年齢50歳オーバー(たぶん)の、見目むさ苦しい風貌の男たちだ。しかもタイトルが「初戀」である。壮年に達した男が16歳を振り返って「ああ、青春よ、青春よ。」などと問いかけるような、気恥ずかしさと一種の「をかしみ」とちょっぴり狂気すら感じさせる。何たるセンチメンタリスム!しかし彼らは大真面目なのだ。だから胸を打つ。よって胸を突き刺される。ゆえに胸を抉られる。


参考動画(ドラムが違うけど)
www.youtube.com