川下直広カルテット / 初戀
評判の高い新作をようやく聴く。
- アーティスト: 川下直広カルテット
- 出版社/メーカー: 地底レコード
- 発売日: 2016/06/19
- メディア: CD
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川下さんのテナーは音といい、歌い方といい、一聴してすぐそれと分かる。そのテナーでジャズやらポップスのカバーやらを、格調という言葉など知らないのか、あるいは忘れたのか、もしかすると最初から持ち合わせていないのか(いやある意味、とっても格調高いのだけれど)、淡々と、ともすると朗々と、時には轟々と、そして切々と歌い上げていく。玉置宏や浜村淳の前口上でも聴こえてきそうな、いわば演歌である。もしくは艶歌である。あるいは怨歌である。もしかすると炎歌かもしれない。他のメンバーも、この深く熱くエグく重く優しい音楽に奉仕している。カルテットの4人は平均年齢50歳オーバー(たぶん)の、見目むさ苦しい風貌の男たちだ。しかもタイトルが「初戀」である。壮年に達した男が16歳を振り返って「ああ、青春よ、青春よ。」などと問いかけるような、気恥ずかしさと一種の「をかしみ」とちょっぴり狂気すら感じさせる。何たるセンチメンタリスム!しかし彼らは大真面目なのだ。だから胸を打つ。よって胸を突き刺される。ゆえに胸を抉られる。
参考動画(ドラムが違うけど)
www.youtube.com