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Andrew Hill / The Complete Remastered Recordings on Black Saint & Soul Note

The Complete Remastered Recordings on Black Saint & Soul Note シリーズから、アンドリュー・ヒルが80年代に Soul Note に残した4枚のアルバム(但、Black Saint は一枚も無い)が集成されて再発された。

Complete Black Saint/Soul

Complete Black Saint/Soul

Andrew Hill(p) Alan Silva(b) Freddie Waits(per) Clifford Jordan(ts) Rufus Reid(b) Ben Riley(ds)


収録作品は「Faces of Hope」「Strange Serenade」「Verona Rag」「Shades」の4枚。07年4月の死去後、ヒルのアルバムはこうして再発が続いていて、主要なアルバムが入手しやすい状況になっているのはめでたい。彼の死去後になって本格的に聴き始めた私のようなヒル初級者にとっても、大変ありがたい状況である。


ヒルは70年の録音を最後にブルーノートを離れ、70年代はスティープルチェイスイーストウインドなどで吹き込みを行う。80年代に録音された主要な作品がこのソウルノート・レーベルにおける4枚で、80年代後半のブルーノート復活に伴いアルフレッド・ライオンに請われて89年から2度目のブルーノート復帰を果たすことになる。


前段でソウルノートでのアルバムは4枚と書いたが、実はセッションとしては2回にすぎない。前2枚が80年6月13、14日、この2日間でソロと、アラン・シルヴァとフレディ・ウェイツとのトリオが並行して録音され、ソロが「Faces of Hope」として、トリオが「Strange Serenade」としてまとめられた。後2枚は6年あいた86年7月3~5日、最初の2日間がクリフォード・ジョーダンを含むカルテット、残る1日がソロの録音で、カルテットが「Shades」に、ソロが「Verona Rag」になっている。


恥ずかしながら告白すると、ヒルのソロピアノは私にとってまだまだハードルが高い。ふだんはドラムの基礎リズムやベースの基音、管楽器奏者とのハーモニーの距離感を愉しんでいることが多く、比較するもののないソロは初級者にとってはけっこう難関だったりする。80年のセッションは、トリオにアラン・シルヴァが入っているのがミソで、フリージャズ的アプローチも随所に聴かれ、おおヒルもこんな演奏をするのか、といった感想を抱くのだが、その影響がソロにも現れていて、彼のピアノプレイとしてはかなり思索的な部類に入るのではなかろうか(だからさらにハードルが高いと感じるのかも)。


逆に86年のセッションにおけるカルテット演奏はとてもリラックスしたもので、その後に録音されたソロピアノも、スタンダードが2曲演奏されていることもあってか、楽しげな雰囲気が漂っている。でも結局、4枚の中で最も気に入ったのは(アラン・シルヴァらとのハードな演奏ではなく)このソロピアノ「Verona Rag」だったりするのだから、私の耳というか感性は実にいいかげんなものである。


参照
アンドリュー・ヒル関連の過去記事アーカイヴ(旧ブログ)