あうとわ~ど・ばうんど

Matt Mitchell - Vista Accumulation

マット・ミッチェルの新作を聴く。

Vista Accumulation

Vista Accumulation

Chris Speed(ts, cl) Matt Mitchell(p) Chris Tordini(b) Dan Weiss(ds)


正直に言うと、多くの他作品と一緒に、気が向いてついでに買ったのだが、いやーこんなに良いとは思わなかったなあ。マット・ミッチェルというと、個人的にはティム・バーンの Snakeoil でのプレイが印象深く、もちろんそちらでもいいプレイをしていて、さすがティムがクレイグ・テイボーンの後釜としてバンドに迎え入れただけのことはある、と思っていたのは確かなのだけれど、リーダーとしてもこんなに才能がある人だったとは思わなかった(前作「Fiction」を気になりつつもスルーしていたのが、恥ずかしくなる)。

2枚組の本作は、コンポジションも即興も非常に高度かつ緻密に練られていて、どの曲も魔法にかかったように引き込まれ、陶然とさせられる。クリス・スピードのテナーサックスとクラリネットは、その柔らかな音がいっけん地味にも映るけれど、この音楽に合うのはクリスのこの音色しかない、と確信させる(ちなみに最終曲で、彼のテナーサックスが大噴火するのも珍しい)。もう一人のクリスであるトルディニのベースも、ダン・ワイスのドラムも、ともに滋味深く、4者が複雑に絡み合うさまは、水上に浮かぶ巨大迷宮伽藍が釘も鎹もなしに一部の狂いもなく構築されていくのを見るかのようだ。

あまりに興奮して誉めすぎた気もしないではないが、とにかく感銘を受けたのは確かなので、勢いそのままに記録として残しておく。ところで、このままいくと、彼もまた ECM アーティストになる日がそう遠くなさそうな気がするなあ。