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小埜涼子 / Alternate Flash Heads

北海道出身、名古屋市在住のマルチリード奏者、小埜涼子さんの新作が届く。

Alternate Flash Heads

Alternate Flash Heads

小埜涼子(as) 竜巻太郎(ds)


2012年ベスト(国内盤)の一枚に選んだ「Undine」は途轍もない傑作だったが、今作もまた途轍もない傑作である。アルトサックスの多重録音とドラムによる全99曲、しかも収録時間は30分足らずなのだから、その異形ぶり変態ぶりが際立っている。前作における「タルカス」の手法を、極限まで突き詰めたようなイメージだろうか。


さらにアルバムはコンセプトとして、全曲ランダム再生を推奨している。99曲は繋がっていないようで繋がっていて、順序通りに聴いてもその構成力に感嘆すること請け合いだが、ランダム再生であってもやはり繋がっていないようで繋がっていて、毎回違った音景色が楽しめるというのだ。そういえば、CDプレーヤーにはランダム再生という機能が備わっていることを、しばらく忘れていたなあ(笑)。


ところで、99曲の全組み合わせは 99! 通りということになるわけだけど、これを具体的な数字で書き表すと、

933,262,154,439,441,526,816,992,388,562,667,004,907,159,682,643,816,
214,685,929,638,952,175,999,932,299,156,089,414,639,761,565,182,862,
536,979,208,272,237,582,511,852,109,168,640,000,000,000,000,000,000,000 通り

というオソロシイ数(156桁)が現れる。休みなく全ての組み合わせを聴き通したとしてかかる時間は、ものすごく大雑把な計算で5×(10の151乗) 年となる。これは億とか兆とか京とか垓とか𥝱とか…通常の命数法で記述できるレベルをはるかに超えていて、仮に聴き終えた時点から過去を見渡せば、聴き始めと弥勒菩薩の出現はほぼ同じ過去の一点(始点)に過ぎない。というかそもそも、その始点で宇宙は既にビッグリップによって終焉を迎え、時間も停止しているのだ(小埜さんはライナーノートで「半永久的」と書いているが、その表現すら生やさしく感じる)。30分足らずの作品が、宇宙を超える無限を表現している。どう考えても頭がおかしい。つまり最高だ。


ともかく、小埜さんのサックスの技術は完璧で、アイデアも抜群。過剰な技術を生かせる過剰なアイデアがあり、過剰なアイデアを表現できる過剰な技術があるというのは、やはり途方もない才能である。



参考 小埜涼子 過去記事アーカイブ