あうとわ~ど・ばうんど

高木元輝 / 不屈の民

“現役”レーベルでありながら、ほとんど伝説と言っていい「ちゃぷちゃぷレコード」の埋蔵音源発掘シリーズがリリースされ始めた。「KANG TAE HWAN」(姜泰煥)の再発を除けば、未発表音源ばかり25タイトル以上を発売という、快挙というか愚挙というか義挙というか美挙というか列挙というか盛挙というか壮挙というか暴挙である(無関係なものが1つ混ざっている)。しかも販売元がユニバーサルミュージックというのだから、フリージャズ界にとっては偉大な一歩であり、音楽界にとってはちょっとした捻挫かもしれない。


で、きょうはこれを聴く。

不屈の民

不屈の民

高木元輝(ts)


96年9月のライブ。高木元輝の演奏をあまり多く聴いてこなかったこともあり、スタイルの変遷がよくわからないのだが、70年代の「モスラ・フライト(紙ジャケット仕様)」で聴けるような咆哮と違い、抑制的な、内省的な演奏である(あるいは、ソロというフォーマットがそうさせたのか)。タイトル曲は国際的に非常に有名な曲であるが、メロディーの断片が重ねられるうち、やがて、おずおずと、確かめるように、あの旋律が奏でられていく。かつてのような激情ではない。しかし物哀しくも力強いメロディーが、きょうはやけに心に滲み込んでいく。