あうとわ~ど・ばうんど

Akira Sakata / Johan Berthling / Paal Nilssen-Love - Arashi

Arashi

Arashi

Akira Sakata(as, cl, vo) Johan Berthling(b) Paal Nilssen-Love(ds, per)


ジャズにハマったきっかけはエリック・ドルフィーだったのだが、フリージャズにハマったきっかけは坂田明さんなのだった。今から20年以上前、「モントルー・アフター・グロウ」(初CD化時)の2曲目、「バンスリカーナ」での坂田さんのアルトサックスを聴いたことが全ての始まりだった(ことはずいぶん前に一度書いたことがある)。

当時、坂田さんのアルトサックスに、さまざまな感情が未分化のまま詰め込まれた叫び(単純に喜びにも哀しみにも怒りにも分類不能な、しかし一気に胸の奥底をえぐってくる痛切な“声”)を聴いたのだったが、それは最近聴く、あるいは今聴いている坂田さんの音に対しても感想はほとんど変わっていない。

坂田さんの音が迫ってくると、私は叫びたいような哭き出したいようなこれまでの人生を反省したいような窓の外に(ここは3階であるが)飛び出したいような世を儚みたいような箪笥の上に飛び乗りたいような逃げ出したいようなバカみたいに大笑いしたいような造物主に感謝したいような自分では説明のつかないあらゆる感情があふれてくるのを感じるのだ。

本作は全4曲で、坂田さんは1、3曲目でアルトサックス、2曲目がヴォイス、4曲目にクラリネットとヴォイスを披露する。1、3曲目は坂田さんとポールが抜きつ抜かれつのデッドヒートを展開、この疾走感がたまらない。面白いのが2曲目で、おなじみ「音戸の舟唄」であるが、ポールがやはりぶっ飛ばした結果、坂田さんの同曲におけるヴァージョンの中でも出色の出来になっているのではなかろうか。


試聴