あうとわ~ど・ばうんど

Ingrid Laubrock Octet - Zürich Concert

Zurich Cto

Zurich Cto

Ingrid Laubrock(ss, ts) Mary Halvorson(g) Tom Arthurs(tp) Ted Reichman(acc) Liam Noble(p) Ben Davis(cello) Drew Gress(b) Tom Rainey(ds, xyl)


待望の、イングリッド・ラブロック・オクテットのアルバムが届く。予想とは異なり、8人編成ながら全員せーのっという場面はあまりなく、オクテット内でのミニマル編成を基本とし、組み合わせ積み重ねによって曲ひいてはアルバム全体を構築するようなコンセプトと受け止めた。

冒頭曲、電子音が揺蕩っているような玄妙な音空間が現れ虚を突かれる。どうやらこれは大勢でグラスハープを奏でているらしい。その場に同期するように、メンバーがそれぞれの楽器の音色を載せては消えていく。のみで一曲。これだけで、このアルバムがただ事でないことが知れる。

2曲目以降は、あるメンバーを端緒として、その即興を中心としつつ3~4人が集ってサウンドを広げ、時に全員参加となるような構成が多い。端緒となるソロ機会はメンバーに(たぶん)公平に分け与えられており、4曲目におけるメアリーのソロギター独特の歪みがやはりたまらない。

多くの曲はクールなチェンバーアンサンブルの趣もあり、(どこまでが即興でどこまで作曲かよく分からないが)音の重ね方には常に精緻さを感じさせ、響きも精妙だ。各曲の変わり目は、おおむね場面転換の印象。とにかく、ラブロックのコンポーザーとしての一面にやられた。


録音の様子