あうとわ~ど・ばうんど

Judgment!

いつの間にやら12月ですね。そろそろ『今年の収穫』について(考えんでもいいのに)考える時期ですが、新譜を除いて、つまり手持ちのCDの中で、今年一番ターンテーブルに載ることが多かった演奏家は誰かと考えてみると、それはたぶん(何とびっくり)アンドリュー・ヒルだと思う。
アンドリュー・ヒルが好きになったのは、恥ずかしながらここ2年ぐらいのこと。むろん「Point of Departure」は昔から知っていて、しかしエリック・ドルフィーを中心に聴いていて、ヒルのピアノ・音楽性にはさしたる関心を持っていなかった。が、遺作「Time Lines」を聴いて魅力に開眼。その後、やはり晩年の Palmetto レーベルでの2作品やモザイク・セレクト・シリーズにハマり、今年に入ってからもチコ・ハミルトンとの発掘デュオ作を聴いて、ますます自分の中でその存在が大きくなり、これらのアルバムを折に触れ愛聴してきたというわけ。
そういえば先月、Jazz Samurai ライブでスガダイロー氏と話した時、スガ氏の『グフにはアンドリュー・ヒルが似合う』発言について尋ねてみたところ、『かっこいいものにはかっこいいものが似合うよね。グフもアンドリュー・ヒルもかっこいいからね』という答えであった。そこで私が『太宰治とアンドリュー・ヒルも似合うと思いませんか?』と振ってみたところ、『お、それもいいね〜』と賛同していただいたが、まあそんなことはどうでもよくて(笑)、今回は、今までノーチェックだった、他のブルーノート作品群にも手を出してみようかと。
Judgement
Judgement/Andrew Hill」(blue note)。64年、6曲43分。Andrew Hill(p) Bobby Hutcherson(vib) Richard Davis(b) Elvin Jones(ds)
まずこの作品を選んだのは、メンバーに興味を覚えたのと、タイトルに惹かれたから(『ジャッジメント!』と言われると、思わず『デリート許可!』と続けたくなる・・・苦笑)。
うむ、かっこいい。ヒルのピアノの、陰翳に富んでいるというべきか情緒不安定というべきかいやしかし異様なあやうげな美しさが実にたまらん。もはや新作は発表されないが、私には未聴の過去作も数多く、これからもこうして味わってゆくことができるのは幸福だ。