あうとわ~ど・ばうんど

Iron Man

IRON MAN
月イチ・ドルフィー。「IRON MANEric Dolphy」(douglas)。63年、全5曲41分。Dolphy(as,bcl,fl)Woody Shaw(tp)Bobby Hutcherson(vib)Eddie Kahn(b)Richard Davis(b)J. C. Moses(ds)Clifford Jordan(ss)Sonny Simmons(as)Prince Lasha(fl)Garvin Bushell(bassoon)。
CONVERSATIONS」と同じ、ダグラス・セッションの片割れ。さて。まず、タイトル曲①、②「Mandrake(The Madrig Speaks, The Panther Walks)」での、ドルフィーのアルトサックスに耳を澄まそう。そして、独断と偏見で言わせてもらう。ここでは、プレスティッジ時代のあの完成された流麗なフレージングが姿を消している。かつてぼくは『61年という年は、ドルフィーがサックス奏者として確実に一つのピークを迎えていた時期だと思う。ドルフィーはそれを自らの手で壊し、新たな段階へ進もうとした』(12月3日参照)と書いた。その推測の根拠が、この作品や「Last Date」(こっちは、死の直前で体調が悪かった。という説もありますが)などである。“つなぎ”のフレージングは変わらず流麗なものの、要所要所での音の跳躍加減が著しく激しくなっている。そして、ここからは完全な想像の世界だが、ドルフィーは音楽の流れの中でアドリブを取ることを放棄し、瞬間瞬間の気分を重視するようになったのではないか(それにはオーネットの影響が考えられる)。というのも、例えば一気に高音部に飛び跳ねようとしたとき、たまにヒットしないこともあるのだが、ワンテンポ遅れてももう一度挑戦しようとすることが、61年以後非常に多くなるのだ。この、流れを崩しても出したい音にこだわるドルフィーというものに、ぼくはタマラナイいとおしさを感じてしまう。なぜって、実はぼくも同じで・・え、一緒にするなって? はい、すみません。
③「Come Sunday」⑤「Ode to C. P.」は、リチャード・デイヴィスとのデュオ。「Conversaions」の「Alone Together」のようなスケール感はないが、しみじみしたいい演奏です。