あうとわ~ど・ばうんど

Dolphy in Europe vol.2

久ーしぶりに、「Eric Dolphy in Europe vol.2」を聴く。オリジナルアルバムは全4曲40分。Dolphy(as,fl)Bent Axen(p)Erik Moseholm(b)Jorn Elniff(ds)。やっぱイイなあ。個人的には、アルトによる②−④が好き。順に行こう。
②「The Way You Look Tonight」。速いテンポで、ドルフィーがテーマを吹きはじめる。背後で笑ってるのは誰だ? それはともかく、現在の耳で聴けば、速いことは速いのだけれど激速というわけではないのだが、当時のヨーロッパのミュージシャンたちにとっては速すぎたのだろう。ピアノのバッキングは狼狽してるし(ソロでは、とにかくドミナントモーションだけしている感じ)、ベースのランニングもグラついたり止まったり、ドラムだけが必死に食らいつく。ドルフィー、お構いなしの壮絶なアドリブ(というわけにも行かなかったのか、ソロの途中、テーマメロディーを挟む箇所も)。ちなみに、この演奏、阿部薫も大好きだったそうである。「B面2曲目でね、ドラムとフォーヴァースやるでしょ。あそこを聴くと、いつも泣けてくるんだ。下手なドラムなのにね、ドルフィーはとっても真面目に対話しようとしていて、ドラムも一生懸命、それに応えようとしていて、……」*1
③「Miss Ann」とクレジットされているが、この曲は「Les」。ところで、ドルフィーの1961年秋のヨーロッパ楽旅は、本作を含め現在沢山のライヴ盤が出ているけれど、ドルフィーと地元ミュージシャンのセッションが大半のため曲もスタンダードが多いが、ドルフィーのオリジナルもたまに演奏される。おそらく「ブルースだから」と説き伏せたのだろう。そう、実は意外なことにドルフィーのオリジナル曲にはブルースが多いのである。この「Les」もそうだし、間違えられた「Miss Ann」もそうだし、「245」「Serene」「South Street Exit」なんかもそうである。もちろんブルースといっても規格外のものも多くて、「Les」「Miss Ann」は共に、12小節+2小節のブリッジ=14小節で、コード進行もちょっと変だ。他のブルースでも、12小節を基調としつつもちょっとイビツな進行・構成の曲が多い*2
④「Laura」。本作中では、この演奏が一番好きだ。実は、ドルフィーのアルトにおけるバラード表現の最高峰の一つではないか、と思っている。リズム陣が下手なのは全然気にならない。ドルフィーの音を浴びているだけで充分。アブストラクトな美とでも言おうか、本当にたまらない。

*1:阿部薫1949-1978」文遊社刊98頁。なお、引用部冒頭の「B面」は「A面」の間違いである。

*2:「1001」を信用するとすれば。ちなみに自分は耳も悪いし楽理も暗いので、もしかすると変でも何でもないのかも知れない。もっとも、ドルフィーは通常のスタンダードでもアレだから、テーマの進行は関係ないのかも。誰か、理論に明るくて興味のある人、分析してください。