あうとわ~ど・ばうんど

In All Languages

昔はあんまりOrnette Colemanが好きじゃなかった。名盤ガイドに必ず載っている初期作品を聴いても、あんまりピンとこなかった。というより、アノ音が嫌だったのだ。そんな自分に、オーネットの魅力を開眼させてくれたのが「In All Languages」(87年、自分の持ってるCDは97年)だ。
レコードでは2枚組だが、CDは2in1で全23曲72分。前半10曲が「The Shape of Jazz to Come」のオリジナル・カルテット、後半13曲が当時のレギュラーグループであるプライムタイム・バンドによる演奏。
冒頭の「Peace Warriors」を聴いた瞬間、嫌いだったはずのアルトの音が、たまらなく甘美に聴こえた。2曲目の「Feet Music」でのテナー演奏も素晴らしい。4曲目チャーリー・パーカー風テーマを持つ「Word for Bird」でのオーネットも何と勇ましいことか。また、6曲目「Latin Genetics」も、実にお茶目というかチャーミングだ。
ちなみに今回、聴いて思ったのは、このカルテットがジョン・ゾーンのMasadaにかなり影響を与えているのではないかということ。ゾーンも「Spy vs. Spy」を残しているように、元々オーネットへのリスペクトは相当のもの。であれば、現在のオーネット・バンドにGreg Cohenが参加しているのも理の当然というべきか。
後半のプライムタイムもカッコイイ。なるほど、MAZURUが影響を受けた(といわれる)のもよく分かる。実にクールでポップだ。カルテットと同じ曲を7曲も演奏していて、聴き比べてみるのも一興(オーネット自体はそんなに変わらないけれど)。ちなみにプライムタイムでも演奏される「Latin Genetics」と、クロージングでもある「Peace Warriors」は昨年、早坂紗知もカバーしていた(「beat beat jazzbeat!」いいアルバムです)。
全曲3分前後とコンパクトだが、中身が濃い。そして、とにかく、この音を浴びているだけで気持ちいい。やっぱり是が非でも、来日公演を見に行かなければなあ。