あうとわ~ど・ばうんど

Malam Saya

榎本秀一のサックスを聴くと「演歌」だなぁと思う。アケタ・オーケストラの何種類かのアルバムで、必ずといっていいほど榎本がフィーチャーされる「Airgin Rhapsody」を聴くたび、そう思ってしまう。演歌そのものはどちらかといえば嫌いなんだけれど、「演歌」を感じさせるミュージシャンは、例えば片山広明しかり梅津和時しかり坂田明しかり板谷博しかり不破大輔しかり云々、というように結構好きである。
榎本の代表作ということになると、自分にはやはり「マラム・サヤ」(91年、aketa's disk)であろう。全8曲54分。榎本(ts,ss,fl,尺八,etc)加藤崇之(g)是安則克(b)楠本卓司(ds)+ヤヒロトモヒロ(per)シューミー(vo)。
1曲目「セレンゲティ」。ライナーには「キリマンジャロの娘」にインスパイアされた、とある。なるほど部分的にはそっくりだが、全体的なサウンドはもっと粘っこい。2曲目は加藤作の名曲「Jump Monk Jump」。榎本は、テナー・ソプラノ2本吹きのみでアドリブを吹ききる。後半の盛り上げ方が見事。3曲目はタイトル曲「マラム・サヤ」。プレスティッジ時代エリック・ドルフィーのような静謐なフルートが味わい深い。4曲目「ロド」。アルバム中、この曲が一番好きだ。「エアジン・ラプソディー」や「エミ」や「グッド・バイ」を部分的にいいとこどりした(と本人がライナーに書いている)哀感あふれる曲にのって、榎本ソプラノが歌い上げる。
5曲目「津軽山歌」では、榎本流家元である尺八を吹く。6曲目は「Staff60のテーマ」。テナー奏者としての実力をいかんなく発揮。7曲目「Sunshine '88」。途中挿入される「パラソルパパ」の歌が、一人で歌とサックスの掛け合いをしていたりして、楽しい。最後はショーター作「Virgo」を、テナーで噛みしめるように演奏。深い余韻を残す。ちなみに昔、このカルテットのライヴを、札幌ジッピー・ホールで見たことがある。すごく面白かったが、客少なかったような気がするなあ(笑)