あうとわ~ど・ばうんど

Montreux Afterglow

昨夜、久しぶりに聴いた。非常に懐かしい。フリー・ジャズにはまるきっかけになったアルバムだ。

高校時代、ドルフィーを聴いてジャズにのめりこみ(それまではよく聴く音楽の一つに過ぎなかった)、その後当然というかなんというか、オーネットを聴き、「The Shape of Jazz to Come」はヘンで面白いと思ったのだが、「Free Jazz」は当時はよく分からなかった(ただ、不快ではなかった。分からなかっただけで)。
大学入学後、CD屋で山下洋輔の名を目に留めた。坂田明も入っている。有名だが聴いたことがない。そういえば、油井正一がどこかでこの盤を褒めていたなあ、と思い出し購入してみた。

1曲目(A面)「Ghost」。なんかかわいい感じのテーマだなー(そのときはまだアイラーを知らなかった)と思っているまもなくドシャメシャグワランバッタンの世界に突入。何じゃコリャと思っていたら「赤とんぼ」が飛び出し、「コネコ、ネコノコ、オコゼノコー!」とわめく。思わず笑ったが、音楽そのものはやっぱりよく分からない。

そして2曲目(B面)、必殺の「Banslikana」がやってくる。東洋風の郷愁そそるメロディーの後、坂田明が飛び出した。

そうだったのか!!

分かった、というのは正確ではない。感じたのだ。しびれたのだ。すごいと思った。世界の見え方が変わった。いや違う。言葉にならない。あの瞬間の感激をぴたりと言い当てることはできない。とにかく、そういうことだ。

それからはフリー街道まっしぐら。ジャズ研時代、ピアノの先輩と二人でフリー・セッションと称して「Banslikana」をよくやったなー。先輩が、高音部の鍵盤の上に、火のついた煙草の載った灰皿を置き、ガンガンやっているうち煙草が鍵盤に落下。部室のアップライトの白鍵が煙草型にえぐれたなんてのも、懐かしい思い出だ。

かつて飽きるほど聴いた「Montreux Afterglow」だが、聴いてみるとやっぱり、胸が高鳴る。あのころの熱狂に比べるとやや薄れたかもしれないが、十分に熱いものがこみ上げてくる。



ちなみに余談だが、このアルバムは、第3期山下洋輔トリオが1976年7月9日、スイス・モントルージャズ祭に出演したときの記録。山下トリオの出演順は2番目。オープニング・アクトを務めたサンラ・アーケストラの演奏は傑作「Live at Montreux」として残っている。さらに余談だが、生向委の「Take The A Train」はこの「Live at Montreux」を参考にしたと思うのだが、どうだろうか。さらにさらに、山下トリオの後、セシル・テイラーが出演しているが、それはレコードになっていないのだろうか。