あうとわ~ど・ばうんど

Ken Vandermark / Paal Nilssen-Love - Screen Off

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Paal Nilssen-Love & Ken Vandermark / Screen Off
PNL Records, 2019)
Ken Vandermark (reeds), Paal Nilssen-Love (ds, perc)


なんだこれは。ふたりのいつものデュオのつもりで聴き始め、おおヴァンダーマークもニルセンラヴも音がいったんステージの床にぶつかって、しかし勢いそのままに客席に押し寄せてくるような質感がすばらしい、なんて思ってたら開始数分で奇妙な編集が。慌ててジャケットを見たら、なんとこのアルバム、2008年から10年間のデュオライブを21篇、ラッセ・マーハウグがエディットしたものだという。音質音感バラバラなオーディエンス録音をザッピングしてるような感覚で、ふたりのクライマックスにクライマックスを重ねるいつもの演奏とは全く異なるものの、まあたまにはこんなのもアリでしょう。

Anna Webber / Clockwise

Clockwise (feat. Matt Mitchell, Jeremy Viner, Jacob Garchik, Christopher Hoffman, Chris Tordini & Ches Smith)

Clockwise (feat. Matt Mitchell, Jeremy Viner, Jacob Garchik, Christopher Hoffman, Chris Tordini & Ches Smith)

Anna Webber / Clockwise
Pi Recordings, 2019)
Anna Webber (ts, fl, bass fl, alto fl), Jeremy Viner (ts, cl), Jacob Garchik (tb), Christopher Hoffman (cello), Matt Mitchell (p), Chris Tordini (b), Ches Smith (ds, vib, timpani)


マット・ミッチェルやダン・ワイスのいずれも Pi Recordings からのラージグループに参加していたアンナ・ウェバーが満を持して同レーベルからのリーダー作をリリース。某所の解説を読むとクセナキスやらシュトックハウゼンやらといった現代音楽作家からインスパイアを受けたようなことが書かれている(わたしにはよく分からない世界だ)が、『時計回り』というタイトルながら、冒頭曲から等間隔に時を刻まず時おり逆回転してみせるかのごとき壊れた時計のような奇妙なリズムや、2曲目では精妙にズレたアンサンブルを聴かせたかと思うと、3曲目の『King of Denmark』はオーケストラアレンジをすればマリア・シュナイダーのレパートリーにもなりそうな王道メロディーを示したりと、アルバム全体に一筋縄ではいかなさが充満している。セプテット内には彼女と同じテナーサックスのジェレミー・ヴァイナーを配し、2人ともヒトクセあるソロを披露するのも好印象。

Trapper Keaper Meets Tim Berne & Aurora Nealand

またしても、ずいぶん間が空いてしまった。


Trapper Keaper Meets Tim Berne & Aurora Nealand
ears&eyes Records, 2019)
William Thompson IV (keyb, electronics, vo), Marcello Benetti (ds, cymbals, whistles, vo), Aurora Nealand (as, accordion, effects, vo), Tim Berne (as)


イタリア出身のドラマーと、キーボーディスト(は何処出身か知らない)のデュオグループに、ティム・バーンらがゲストで加わったアルバム。音楽は民族音楽風だったりテクノみたいだったりファンク的だったりニューオーリンズ風だったりアンビエントのようだったりと、一曲一曲異なるのだが、わたしの目当ては当然ティム・バーンなのであって、一聴して彼と分かる独特なプレイが彼のリーダー系諸作に最適化されたものでなく、実は汎用性が高いということを思い知るのである。

2月2週のプレイリスト


WSCHÓD(Clean Feed)
Rodrigo Pinheiro (p), Zbigniew Kozera (b), Kuba Suchar (ds)



Hatcher / Maunu / Kirshner - The Raven and the Dove
Gerrit Hatcher (ts), Peter Maunu (g, violin, mandolin), Julian Kirshner (ds, perc)

Human Feel / GOLD

Human Feel の新作が(実は Clean Feed よりも前に)届いている。

GOLD

GOLD

Human Feel / GOLDIntakt Records
Andrew D’Angelo (as, bcl), Chris Speed (ts, cl), Kurt Rosenwinkel (g), Jim Black (ds)


12年ぶり5枚目(16年のデジタルEPを含めると6枚目)のアルバムとなる。結成から30年以上のグループとしては何ともスローモーなペースだが、90年代半ばに活動を休止してから時々思いだしたように再結成するだけで、実際には活動していない期間のほうが長いのだから、まあそんなものなのだろう。アンドルーとクリスの憂愁を帯びたアンサンブルからスタートする本作は、カートがふだんはメインストリームなシーンで活躍しているのを割り引いても、なんとも至極真っ当なジャズを聴かせ、さすがに皆丸くなったのか、円熟と見做せばよいのか、という感想も浮かぶけれど、アンドルーの切れ味鋭いアルトとクリスのスモーキーなテナーの両サックスプレイは、それ単体としても対比としてもやはり魅力的だ。ところで作品中の或る曲を聴いていると、もしまた10年後に再結成してアルバムを残すとして、レーベルが ECM だったとしても驚かないにちがいないと思わせる。


参考動画
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Larry Ochs | Nels Cline | Gerald Cleaver / What Is To Be Done

Clean Feed の新作が届いている。

What is to Be Done

What is to Be Done

Larry Ochs (ts, sopranino), Nels Cline (elg, effects), Gerald Cleaver (ds)


昨年、洞窟における素晴らしいデュオ作品を残したラリー・オクスとジェラルド・クリーヴァーのコンビに、エレクトリックギターのネルズ・クラインが加わったトリオ。へしゃげたような音でコク深いオクスのサックスと、しなやかで躍動的なクリーヴァーのドラムの噛み合わせが良いのはもちろんだが、空間を多彩に塗り立てるクラインのギターの効果で、音楽が刻々と多様な表情を見せるのがまた味わい深い。なお、本作がレーベルの記念すべきカタログナンバー500番である。


参考動画
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