あうとわ~ど・ばうんど

Kodian Trio - II

Trost Records の新譜(デジタル)を聴く。

II [Analog]

II [Analog]

Dirk Serries(g) Colin Webster(as) Andrew Lisle(ds)


ベルギーのギタリスト Dirk Serries 率いる Kodian Trio の、オフィシャルなアルバムとしては2枚目(ただし実際には4枚目らしい。これまでの3枚は聴いていないが)。Weasel Walter のグループを思わせるような(実際に同じ編成のトリオがあるかどうかは知らない)、皆が前のめりになってゴロゴロと転がっていくようなサウンドが心地よい。最近名をよく目にするようになった Colin Webster のアルトサックスも、個性的でなかなか良いぞ。


参考動画
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波多江崇行・川下直広・小山彰太 / Parhelic Circles

PARHELIC CIRCLES

PARHELIC CIRCLES

波多江崇行(g) 川下直広(ts) 小山彰太(ds)


加藤崇之さんとのデュオアルバム「Ocean voice」(7月18日参照)で不思議な印象を残した九州在住ギタリスト波多江崇行氏と、おなじみ川下直広さん・小山彰太さんによるトリオアルバム。今年5月、福岡でのライブとのこと。前記作ではエフェクトをふんだんに使っていたが、本作ではしっかりとギターのサウンドである。オーネット・コールマンの演奏で有名な「メアリー・ハートマン」もやっているが、聴きどころはやっぱりCDの大半を占めるタイトル曲(即興)で、意外や音で埋め尽くすのではなく、スカスカな空間のありようが何とも味わい深い。

そういえば今年3月になってるハウスで川下直広カルテットを観た時、ちょうど道徳の教科書検定で「パン屋」が反郷土的だと意見が付けられ出版社が「和菓子屋」に変えたというニュースが世間を騒がせていたころで、川下氏が「そのうちジャズは反郷土的だとして演奏できなくなるかもしれないが、望むところだ」みたいなことを言って演奏を始めたのは心底カッコよかったのだけれど、今度はできれば曲主体でなく即興主体の生演奏を体験したいなあ、と思ったのだった。

TONY MALABY TRIO

トニー・マラビーの新作(32分のミニアルバム)がデジタルリリースされている。


TONY MALABY TRIO
Sello Cabello, 2017)
Tony Malaby(ts) Juan Pablo Arredondo(g) Carto Brandan(ds)


詳細不明ながら、マラビー以外のメンバーはブエノスアイレスのミュージシャンのようである。しかしまあメンバーがどうあれ、音楽を魅力的なものにしているのはマラビーのテナーサックスであることに間違いはないわけであって、ブロウせずともボヘッとか吹き延ばしとか繰り返しだけでこんなに心地よく魅了してくれる人は、やはり他にない。

Rent Romus' Life's Blood Ensemble - Rising Colossus

RRのアルバムをもう一枚聴く(昨年の作品だが)。


Rent Romus' Life's Blood Ensemble - Rising Colossus
Edgetone Records, 2016)
Rent Romus(as, fl) Joshua Marshall(ts) Heikki "Mike" Koskinen(e-trumpet / tenor recorder) Mark Clifford(vibe) Safa Shokrai(b) Max Judelson(b) Timothy Orr(ds)


これまた楽しいアルバムなのである。雰囲気としては PBB の作品や、日本のある種のジャズにも似ていて、エッジが利いて自在なRRのアルトサックスはもちろんのこと、テナーサックスやエレクトリックトランペットやヴィブラフォンや2ベースなども多士済々で活躍している。こういう人たちが日本においてはほぼ無名で、ほとんど聴かれないというのは何とも惜しいことだ。ちなみにこのグループはこれまでたくさん吹き込みをしているようなので、今後も掘り下げていこうと考えている。


参考動画(RR本人による今年7月の投稿)

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Deciduous / Midwestern Edition Vol. 1

PBB、Denis Guivarc'h に次いで注目しつつある知られざるアルトサックス奏者 Rent Romus (サンフランシスコ在住らしい)参加の新作を聴く。

Deciduous, Midwestern Edition, Vol. 1

Deciduous, Midwestern Edition, Vol. 1

Rent Romus(as, ss, fl, small perc) Hasan Abdur-Razzaq(as, ts, bells) James Cornish(tp, baritone horn) Gerard Cox(ds, p, wurlitzer) Caleb Miller(p, wurlitzer, nord) Steve Simula(perc, fl, bells, ds) John Phillip Allen(b)


とりあえずRRと呼ぶことにしよう。RRの魅力は以前にも述べたが、エッジーな音や二本同時吹奏等の技術の達者さ。新作は、多くの創造的ジャズの源となった米国中西部が主題となっているようだが、やや大きめの編成で多様な楽器が入り交じり、目当てのRRはもちろんだけれど、Hasan Abdur-Razzaq の特異な個性にも惹きつけられた。


試聴

Woody Shaw & Louis Hayes / The Tour Volume Two

昨年、鮮烈な印象を残したウディ・ショウの発掘盤第2弾を聴く。

The Tour

The Tour

Woody Shaw(tp) Junior Cook(ts) René McLean(ts) Ronnie Mathews(p) Stafford James(b) Louis Hayes(ds)


前作が1976年3月22日のライブだったのに対し、3~4月の別日のライブからセレクトされている(一曲だけテナーがルネ・マクリーンのトラックが入っていて、なぜかこれは翌77年4月の演奏)。また、前作とは対照的にいわゆる有名スタンダードが中心の選曲で、個人的好みを言えば圧倒的に前作に分があるものの、絶頂期のショウのプレイに欠点はありようもない。主流派系の好きなアマチュア・ジャズプレイヤーたちにとっても良質なお手本だろう。