あうとわ~ど・ばうんど

梅津和時 KIKI BAND / Amatsu-Kitsune

KIKI BAND の新作が出ている。

Amatsu-Kitsune

Amatsu-Kitsune

梅津和時(sax, cl) 鬼怒無月(g) 早川岳晴(b) Joe Trump(ds)


帯には「記念すべき10枚目」と書いてある。試しにCD棚を確かめてみたら、9枚そろっていた。皆勤賞である。そういえば、今はなきイーストワークスから出た初アルバムに快哉を叫んでから、気が付くと16年がたっていて、ドラマー交代があったにせよ、梅津さんのレギュラーバンドとしては DUB やシャクシャインを超える活動歴ということになるのではないか。新作はノリの良い曲やら情感に浸れる曲やらをいつものごとく愉しませてくれるのであって、新機軸は特にないもののさすがの至芸といったところ。なお現在、バンドは新譜発売記念の国内ツアー真っ最中(例によって北海道はハブられている)で、公式HPではベスト曲ファン投票が行われていて、ツアーファイナルの新宿 PIT INN で順位の高かった曲を演奏するそうだ。個人的には初期の曲が好きなので、もしそれらが演奏されるならぜひともアルバム化してほしいものであるが・・・


ティザー(ツアー予告)
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Dave Rempis - Lattice

デイヴ・レムピス初の無伴奏ソロCDを聴く。正式発売は10月だが、本人に注文したらすぐ届いた。


Dave Rempis - Lattice
Aerophonic Records, 2017)
Dave Rempis(as, ts, bs)


今年春にライブ録音したソロシリーズから6曲を厳選したとの由。ふだんのアグレッシブな吹きっぷりとは一転して、ゆっくりとじっくりと、管の鳴りと響きにも非常に気を配った、やや意外な作品となっている。とくに冒頭曲、バリトンサックスで、サブトーンをふんだんに利かせて奏でられるビリー・ストレイホーンの「A Flower Is A Lovesome Thing」には虚を衝かれた。ライナーノーツでは彼自身が、コールマン・ホーキンスエリック・ドルフィー、アンソニー・ブラクストン、スティーヴ・レイシージョーマクフィー、アブ・バース、マツ・グスタフソンの名を挙げてソロワークへの影響を語っている(各曲の端々に影を見て取ることは意外と簡単である)が、ヴァンダーマークの名がないのは意味深だ(?)。


参考動画(アルバムに取り上げられなかった4月25日の演奏)
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ARASHI - Trost Live Series 001

現在日本ツアー中(例によって北海道は無縁)の ARASHI の新作が出ている。 

ARASHI - Trost Live Series 001
TROST Records, 2017)
坂田明(as, cl, vo) Johan Berthling(b) Paal Nilssen-Love(ds)


今年5月のライブの録って出しだが、ジャケにはタイトル以外、メンバーも曲目も録音データも載っていないというそっけなさ。詳しくは bandcamp ページを参照せよ、ということなのか。もっとも、200枚限定で Amazon あたりではラインアップされていないようなので、もともとツアー物販用ということなのかもしれない。内容はいつも通りと言えばいつも通り、じっくりした展開と皆で全力疾走する展開とが交互にやってくる。いつ聴いても坂田さんのアルトの音はやっぱりいいなあ、とはいいながら、坂田さんがこのバンドではないがもうすぐ札幌に来る予定になっているのだけれど、いつになく料金が高いのと、他にいろいろ観たいライブが多いので、今回は見送る公算だったりする。


参考動画(CD録音5日後のライブ)
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PBB's Bread & Fox - Live @ Jazz Club Ferrara

PBB がライブアルバムをデジタルでリリースしている。


PBB's Bread & Fox - Live @ Jazz Club Ferrara(2017)
Piero Bittolo Bon(as, compositions) Filippo Vignato(tb) Glauco Benedetti(tuba) Alfonso Santimone(p) Andrea Grillini(ds)


昨年10月の録音。その前月にリリースされた「Big Hell On Air」の発売記念ライブだと思われるが、アルバムから9曲中7曲が選抜されている(最終曲はもちろんヘンリー・スレッギルの「Paper Toilet」だ!)。スタジオ録音だった前述作とはアンサンブルの一体感と緊密度は全く変わらぬながら、PBB のアルトソロは微妙に異なって、ライブならではの熱さと勢いが好ましく心地よい。ステージ上で簡易な機材で録音したような、やや粗い音像も雰囲気にとても合っている。


参考動画(ライブ録音時の映像)
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(ちなみに今年1月のライブでは新曲が披露されている)
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Ton-Klami / Prophesy of Nue

NoBusiness Records のちゃぷちゃぶシリーズ新作が届く。

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Ton-Klami / Prophesy of Nue
NoBusiness Records, 2017)
高田みどり(marimba, perc) 姜泰煥(as) 佐藤允彦(p)


95年5月の演奏。トン・クラミというと、昨年16年ぶりに再結成して関東周辺をサーキットしたがそれは当然観ていなくて、メールスでの91年のライブ盤(「TON・KLAMI」)も昔持っていたはずなのだけれど今は見当たらない(どうやら手放してしまったようだ)。おかげで記憶としてはかなり薄っすら、となってしまったのが逆に良かったのか、力強くスリリングな即興にひき込まれた。私はどうしてもサックスを中心に耳を傾けがちになってしまうのだけれど、本作ではほかにも、佐藤さんのピアノの「そこに当然のようにある、あまりの自然さ」になぜかとても心をひかれた。「鵺の予言」というタイトルなのだが、実は佐藤さんがこの中で最も鵺的なのではあるまいか。ちなみに本作録音時の演奏は90分一本勝負だったそうで、アルバム化にあたり、佐藤さんが3トラック56分余に編集を施したとのことである(ライナーで、ちゃぷちゃぷオーナーの末冨氏が90分フルタイムで聴けるのは自分ひとりの特権と書いていて、いやあこういうのは、限定盤のダウンロード特典とかにしてほしいものだ)。


参考動画(録音時の演奏)
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Trio Now! - Live At Nickelsdorfer Konfrontationen 23.07.2016

先日紹介したメテ・ラスムッセンにせよ、19日にライブを観た纐纈雅代さんにせよ、あるいはわれらが吉田野乃子さんにせよ、最近、所謂フリー~インプロ系女性サックス奏者(アルトが多い)が国内外問わず大挙して活躍し始めている。あるいは、正当なスポットライトが当たり始めた、というべきかもしれない。このアルバムも、女性アルト奏者が参加していたので何気なく聴いてみたら、惹き込まれた。

Live at Nickelsdorf Confrontatione

Live at Nickelsdorf Confrontatione

Tanja Feichtmair(as, vo) Uli Winter(cello) Fredi Pröll(ds)


3人とも初聴で名すら知らなかったが、サックスはオーストリア出身だそうで、端整な音で間歇矢継ぎ早に情熱的に即興を積み上げる演奏が魅力的。音楽は三位一体の密接な共闘が見事で、全員で徐々に熱くなっていく。観衆の大盛り上がりも気持ちがよく分かるというものだ。私が知らなかっただけで、グループとしては2枚目にあたるそうで、前作もぜひ聴いてみたいところ。


参考動画
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Rasmussen / Dorji / Damon - To The Animal Kingdom

メテ・ラスムッセンの新作が届く。

To the Animal Kingdom

To the Animal Kingdom

Mette Rasmussen(as) Tashi Dorji(g) Tyler Damon(ds)


デンマーク出身のラスムッセンに、ブータン出身のギタリスト、米国出身のドラマー、というメンバーによる3曲45分。演奏は現代的なフリージャズ、というところだろうか。ギターとドラムはデュオグループを組んでいる相棒同士だそうで、息の合ったノイジーサウンドを発しているが、そこにラスムッセンが乗っかって、爽快な轟音の中から(ときに坂田明さんを思いださせる)抒情と官能があふれだすといった感じ。それにしてもラスムッセンのアルトは、極小音からおおきな音まで等しく朗々として、とにかく音が素晴らしいです。