あうとわ~ど・ばうんど

波多江崇行 & 加藤崇之 / Ocean Voice

多忙と猛暑で体調を崩した。もう若い頃のようにはいかぬのだな、と痛感する日々である。ということはさておき、敬愛する加藤崇之さんの新譜が出ている。

Ocean voice

Ocean voice

波多江崇行(g, effect) 加藤崇之(g, effect)


九州在住ギタリストとの「ダブル崇ユキ」によるツアーにおけるライブ録音とのこと。ともにエレクトリックギターに、エフェクトもふんだんにまぶし、ギターデュオというよりはさながらエレクトロニクスデュオという雰囲気。「海からの声に導かれるように演奏した」という解説を、どの程度真に受けて良いのかわからぬながら、なるほど不思議な美しさと抒情が聴き取れる気がする。


参考動画
www.youtube.com

Christoph Erb, Jim Baker, Frank Rosaly / ... don't buy him a parrot ...

5月にライブを観て感銘を受け、アルバムを2枚買った(5月4日5日参照)クリストフ・エルブの新作が出ていた。

ERB/BAKER/ROSALY

ERB/BAKER/ROSALY

Christoph Erb(ts, bcl) Jim Baker(p) Frank Rosaly(ds)


またしてもシカゴ勢とのコラボレーションで、セシル・テイラー以来伝統のサックス・ピアノ・ドラムによるトリオ。伝統的編成のためか、以前に聴いた2枚のインプロ的作品とは異なり、フリージャズアルバムとなっていて、また、ライブや上述作でエルブはどちらかといえばソプラノがメインだったのに対し、本作ではテナーとバスクラのみが使用されている。グループコンセプトなのか、詩か何かをモチーフにしたようなタイトル(ライナーを読んでないのでよく分からないけど)が付けられた各曲において、エルブはテナーでもバスクラでも端整な音で、とくにバスクラに顕著だが「歌」を感じさせる演奏をしていて、こういう面もあるのかと感心させられた。


参考動画
www.youtube.com

Yves Charuest, Agustí Fernández, Nicolas Caloia, Peter Valsamis - Stir


Charuest, Fernández, Caloia, Valsamis - Stir
Tour de Bras, 2017)
Yves Charuest(as) Agustí Fernández(p) Nicolas Caloia(b) Peter Valsamis(ds)


このアルバム、とても良い。「Stir」というのは、スペイン出身で今やフリージャズピアノの巨人の一人と言っていいアグスティ・フェルナンデスと、カナダ出身者によって構成されたグループの名称のようだ。カナダ勢はいずれも初聴(たぶん)だけれど、試聴で購入の決め手となった Yves Charuest のアルトが非常に魅力的だ。派手なタイプではない、流麗でもない、うねうねグネグネとしたラインながら、アグスティの強靭なピアノに絡みつき、サーキュラーブリージングによる(と思われる)執拗で愚直な反復がやがてカタルシスをもたらす。この人の他の作品も聴いてみたいぞ。


参考動画
www.youtube.com

Roscoe Mitchell - Bells For The South Side

MITCHELL, ROSCOE

MITCHELL, ROSCOE

Roscoe Mitchell(sopranino, ss, as, bass sax, fl, piccolo, bass recorder, per)
James Fei(sopranino, as, contra-alto cl, electronics) William Winant(per, tubular bells, glockenspiel, vib, marimba, roto toms, cymbals, bass drum, woodblocks, timpani)
Hugh Ragin(tp, piccolo tp) Tyshawn Sorey(tb, p, ds, per)
Craig Taborn(p, org, electronics) Kikanju Baku(ds, per)
Jaribu Shahid(b, bass guitar, per) Tani Tabbal(ds, per)


ロスコー・ミッチェルの新作は、彼を核とした4つのトリオを一堂に会して行われたライブ録音。2枚組に収められた全12曲の様々なタイプの曲は全てロスコーのオリジナルで、「自分史」としての側面がある、のだそうだ。参加しているタイショーンの作品群にも通じるような静謐な出だしから、エレクトロニクスを駆使した色彩豊かなテクスチャ、彼自身の過激なソロを中心とした集団即興、等々を経て、最後の最後にロスコーがメンバーの名を連呼しながら、それまでの音楽が嘘であったかのように、フツーのジャズが演奏されるに至って笑ってしまった。加藤一二三は引退したが、同い年のロスコーは現役のまま、相変わらず頭がおかしいとしか思えない(誉め言葉です)過激な音楽をつくり続けている。


参考動画
www.youtube.com

Ned Rothenberg & Hamid Drake - Full Cycle

6月30日に札幌くうで、ネッド・ローゼンバーグのライヴを観た。

Ned Rothenberg HYPER SAX SOLO
Ned Rothenberg(as, cl, bcl, shakuhachi) + 吉田野乃子(as) 藤山裕子(p)

第1部がネッドのソロで、尺八、クラリネットバスクラ、アルトの順。当初は共演予定ではなかったものの、22日のライブで野乃子ちゃんと共演した藤山さんがぎりぎり札幌滞在中だったため、急遽加わってネッドとのデュオ2曲、続けてネッドと野乃子の師弟デュオが2曲、ちなみに野乃子ちゃんは2曲ともアルトだったが、ネッドは最初バスクラを使って、2曲目でアルトデュオとなった。最後に3人による演奏の後、アンコールはネッドのアルトソロ。という構成で、とりわけネッドのアルトの音の速さとクリアさが印象に残った。

藤山さんが野乃子ちゃんを The Stone に連れて行ったことがきっかけで、野乃子ちゃんのノイズ人生が始まったことは先日書いたけれども、野乃子ちゃんがネッドを師匠にすることにしたのも、藤山さんが野乃子ちゃんに渡した彼のソロCDがきっかけだったというのだから、今回の3人の共演(しかも北海道で)は野乃子ちゃんにとって、すごく意味あることだったわけだ。師弟デュオは本当に良かったけれど、終演後に聞いたところでは、ニューヨーク時代のレッスンでは必ず最後にこうしたセッションをやっていたらしく、なるほど、阿吽の呼吸だったということのようだ。ちなみに、客席には札幌界隈の即興系ミュージシャンのほか、大友良英さんや dj sniff らの姿も見られた。


物販で、売っていたら買おうと思っていた新譜があったので購入。

Full Circle: Live in Łódź

Full Circle: Live in Łódź

Ned Rotheberg(cl, as, shakuhachi) Hamid Drake (ds, frame ds, vo)


ライブでも感じたのは、ネッドの演奏は純粋にインプロというより、その場で曲を精緻に生成している側面が強い(最後に「Amazing Grace」なんかも演奏されているが)ということで、このアルバムを聴いていると、梅津和時さんとカルヴィン・ウェストンとのデュオアルバム(昨年12月21日参照)のことなんかも思い出したりする。

Denis Guivarc'h Trio - Reverse

Denis Guivarc'h のCDをさらにもう一枚。

Reverse

Reverse

Denis Guivarc'h(as) Jean-Luc Lehr(eb) Chander Sardjoe(ds) + Jozef Dumoulin(p) Minino Garay(per) Malik Mezzadri(fl) Nelson Veras(g)


このアルバムのことは3年前にも一度書いているけれど、目下のところデニスの最新リーダー作である。22日の「Exit」にも参加していたベーシストを含むトリオに、曲によってヨゼフ・デュムランやマリク・メザドリ(マジック・マリク)らが加わる。一曲を除いて彼のオリジナル曲で、リズムを強調した楽曲が多く、彼の曲折的ソロスタイルが非常に映える。なお残る一曲はなんと a-ha の「Take on Me」(ちなみに30年前の中学生時代、なぜかアルバムを持っていたので懐かしい)であるが、オリジナル曲たちと違和感ないようにアレンジされている。

何度も書いているが、とにかく彼はもっと知られていいアルトサックス奏者だ。これまでに紹介したアルバムは、デジタルでよければ Amazon でも iTunes でも入手可能だし、CDは「Exit」が容易に入手できるし、今夜の2枚だってレーベル(フランス)に直接注文すれば、なーに、2週間で届く。


参考動画(アルバムと違うメンバーの演奏含む)
www.youtube.com
www.youtube.com
www.youtube.com
www.youtube.com

Olivier Laisney - Slugged / Phonotype

22日に続き、これまで DL版のみで楽しんでいた Denis Guivarc'h 参加作のCDが届く。

Slugged

Slugged

Olivier Laisney(tp, compositions) Stephan Caracci(vib) Joachim Govin(b) Thibault Perriard(ds) Adrien Sanchez(ts) + Denis Guivarc'h(as)


リーダーはフランスのトランぺッター。デニスは2曲のみゲスト参加。再生ボタンを押した後、耳に飛び込んでくる音楽は、あからさまにスティーヴ・リーマン・オクテットを意識したサウンド。というか、デニス参加曲に顕著なのだけれど、ほとんどパクリに聴こえる(まあさすがに後半はその傾向が多少薄まる)。「本家」と比べるとメンバー個々の力量が弱いのは致し方ないところだが、デニスの存在感だけがスペシャルだ。


試聴(デニス参加曲)
www.youtube.com
www.youtube.com