あうとわ~ど・ばうんど

Tres Hongos - Where My Dreams Go to Die

偏愛するピアニスト(兼ドラマー)Marc Riordan の旧作を聴く。


Tres Hongos - Where My Dreams Go to Die
Prom Night Records, 2012)
Jacob Wick(tp) Marc Riordan(p) Frank Rosaly(ds)


3人はいずれもシカゴ在住ないし出身とのことで、演奏は端整なフリージャズ。Jacob Wick はブレスの技を多彩に駆使したいかにもインプロトランペットらしいスタイルで好感が持てるが、やはり私の耳は Marc Riordan の一音一音が粒立ってキレのある明晰なピアノプレイに惹きつけられる。彼のスタイルには、ドラマーであることも多分に好影響を与えているのではないかと思う。


参考動画
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Weinberg / Kirchen / Kirshner - Whip The Apron

Jazz Right Now の前回のプレイリストで興味を覚えて購入。


Weinberg / Kirchen / Kirshner - Whip The Apron(2017)
Sam Weinberg(ts) Charlie Kirchen(b) Julian Kirshner(ds)


面白い個性のテナーサックスである。ブルックリンを拠点とするミュージシャンのようであるが、咆哮の快楽には乏しいものの、フレーズをぶつ切りにして順不同に組み合わせたような捩じれたラインと痙攣的な高音の組み合わせ、には何とも言えぬ魅力があり、ふつふつ煮立つようなフリージャズを展開してくれている。また、トリオの中ではベース(シカゴの人?)の存在感が特筆すべきで、ウィリアム・パーカー的な重さと速さが同居したような、フリーではあるけれど強い推進力が如実に感じられるプレイに惹きつけられる。全然知らなかったけど、こういう人たちがいるんだなあ。ちなみに、テナーのサム・ワインバーグbandcamp でデジタルやカセットテープで作品(ジャケットはコラージュが多く、おそらくはそれがコンセプトとして音楽にも投影されている)をいくつか売っていて、こちらもそのうち機会があったら聴いてみよう。


参考動画 ワインバーグの同編成の別トリオ
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Charlie Kirchen がヴァンダーマークと共演してる映像があった(音楽の毛色はかなり違う)
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Dominic Lash Quartet - Extremophile

The Free Jazz Collective の記事を読んで試聴してみたら良かったので購入。


Dominic Lash Quartet - Extremophile
Iluso Records, 2017)
Dominic Lash(b) Javier Carmona(ds, per) Ricardo Tejero(as, cl) Alex Ward(elg, cl)


目当てはアレックス・ワード。クラリネットも悪くないが、やはり彼の変態ロック乗りギターが大好きだ。おそらく初めて聴くリード奏者 Ricardo Tejero(スペイン出身らしい)の端整な音色で弾けるアルトサックスもなかなか良く、2人のアンサンブルとソロがスリリング。なお最終曲はセシル・テイラー「Mixed」(ギル・エヴァンスイントゥ・ザ・ホット」)のカバー! 全員抜きつ抜かれつの疾走が心地よい。ちなみにグループはこれまで何枚かアルバムを出しているが、本作はピアノのメンバーをアレックスのギターに交代させた初作品とのこと。

Musson - Edwards - Sanders / Bibimbap

引き続き、レイチェル・ミュッソンの近作(新譜というわけでもないが)を聴く。


Musson - Edwards - Sanders / Bibimbap
Two Rivers Records, 2016)
Rachel Musson(ts) John Edwards(b) Mark Sanders(ds, per)


ジャケットとタイトルを見ると、パップの亜流かと勘違いしてしまいそうだが、中身は紛うことなきフリージャズである。全体的に期待値よりはやや低調だが、年季の入った樹皮を思わせるザラザラした豊かな音色のテナーは心地よい。ミュッソンにはぜひとも、それなりの有名レーベルからの作品リリースを期待したい。

Loz Speyer's Inner Space - Life on the Edge

Rachel Musson 目当てで購入。

Life On The Edge

Life On The Edge

Loz Speyer(tp, flh) Chris Biscoe(as, acl) Rachel Musson(ts, ss) Olie Brice(b) Gary Willcox(ds)


ふーむ、ショップのインフォでは『アンサンブルを重視したフリージャズともコンテンポラリージャズとも一概に言い切れない音楽』と評していたけれど、私に言わせればこれは、フリージャズの要素も加味した現代のオーソドックスなジャズ、である。曲想はオーネット、アンサンブルはブッカー・リトルの3管ハーモニー、が範の一つであろうか。目当てのレイチェル・ミュッソンはフリーだろうがオーソドックスジャズだろうが、独特のザラリとした音色でアグレッシブに攻めてくれるのでうれしい。この人は、イングリッド・ラブロックのように、もっと有名になっていいはずだ。リーダーのトランペットが残念ながら退屈であるが、クリス・ビスコーのアルトにはベテランらしい深いコクがあり、総じてまあまあ楽しむことはできる。

山口コーイチ・トリオ / 愛しあうことだけはやめられない

1日に書いた「Circuit (回路)」がとても良いので、対の作品たるこちらも聴きたくなり、取り寄せた。

愛しあうことだけはやめられない

愛しあうことだけはやめられない

山口コーイチ(p) 不破大輔(b) つのだ健(ds)


「回路」がインプロ・サイドで、こちらがメロディアス・サイド、ということらしいが、何という気恥ずかしいタイトルであろうか(英語表記では「Love of Life」ということになるらしい)。とはいえ、単純で力強く風情あるメロディーをてらうことなく、音数を抑えつつ真っ向から取り組んでいて、とてもいい演奏。そういえば、これがリリースされたときにタイトルで敬遠してしまったことを思い出したが、いやはやお恥ずかしいかぎり。山口氏だけでなく、不破さんの温かで豊かなベースも、昔ライブの打ち上げでお話しさせていただいたことがあるが物凄い人格者であるつのださんの人柄が反映されたような気配りの行き届いたドラムも、三位一体で音楽に奉仕している。すばらしい。

Laboratorio Novamusica - Ovejaras Session

Amazon で偶然見つけた PBB 参加のデジタルDL作品。

Ovejaras Session

Ovejaras Session

Alberto Collodel(bcl) Piero Bittolo Bon(as) Umberto De Nigris(tb) Andrea Carlon(b) Lukas Ligeti(ds) Giovanni Mancuso(minimoog synth-electric piano-electronium)


この Laboratorio Novamusica というグループ(?)の作品はいくつか出ているが、PBB が参加しているのは本作だけのようである。演奏はタイトル通り『セッション』であって、バンドとして、あるいはアルバムとしての統一感は特になさそうであるが、エレクトリックサウンド上を各人が思い思いにソロを取る。中でも PBB のアルトはやっぱり輝いていて(特に最終曲の素晴らしさよ)、Kongrochetra(昨年12月22日参照)でのプレイが印象的だった Alberto Collodel のバスクラも良い。