あうとわ~ど・ばうんど

Spinifex - Maximus

エドアルド・マラファ目当てで購入。

Maximus

Maximus

Tobias Klein(as, cl) Piotr Damasiewicz / Gijs Levelt(tp) Jasper Stadhouders(g) Goncalo Almeida(b) Philipp Moser(ds) + Bart Maris(tp) Matthias Muche(tb) Jeb Bishop(tb) Pascal Rousseau(tuba) Edoardo Marraffa(ts) Josh Sinton(bs) Onno Govaert(ds)


Spinifex はロックテイストを取り込んだオランダのジャズクインテットらしい(日本で言えば、具体名は思いつかないが所謂中央線ジャズ的なところもある)。グループの結成10周年にあたる2015年、エドアルド・マラファやジェブ・ビショップを含む米仏伊蘭丁白(ちなみに丁はデンマーク、白はベルギー)7人のゲストミュージシャンを迎えて録音されたのが本作、であるようだ。

入手目的であるマラファのプレイはやっぱり流石であるが、グループ全体のサウンドもいやなかなか面白い。収録されている7曲は Spinifex のメンバーたちのオリジナルで、コンポジションやアンサンブルはかなりかっちりしている印象だけれど、マラファはもちろん、トビアス・クラインやジョシュ・シントンら多士済々のプレイがそれを突き破っていく。参照項として渋さ知らズ(あるいはチビズ)あたりも思い浮かべる。


試聴
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参考動画
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The Urge Trio - Live at the hungry brain

引き続き、もう一枚のクリストフ・エルブ参加作を聴く。

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The Urge Trio - Live at the hungry brain
Veto Records, 2017)
Tomeka Reid(cello) Keefe Jackson(sopranino, ts, bcl) Christoph Erb(ss, ts)


シカゴのミュージシャンとのトリオ(2枚目にあたるらしい)で、意外やこれもフリーインプロ。もっともエルブはともかく、トメカ・リードはもともとAACМの一員だし、アンソニー・ブラクストンとの共演歴もあるので、そう意外なことはないのだが、不思議なのはデルマーク・レーベルを中心にジャズをやっているイメージの強いキーフ・ジャクソンの存在。キーフというと、シカゴのそうそうたるアクの強い面々に挟まれて個性を出すのに苦労しているのか、今一つピンとこないプレイをする人、という印象が強いのだけれど、いやインプロも常にピンとくるわけではないが、こちらのほうがどちらかといえば向いているのではないかと感じた。


参考動画
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Christoph Erb, Frantz Loriot - Sceneries

昨夜、札幌くうで、来日ツアー中のクリストフ・エルブとフランツ・ロリオのデュオ(+横山祐太)を観た。とても良かったので、CDを2枚買ったが、まずはこのデュオのアルバムを聴く。


Christoph Erb, Frantz Loriot - Sceneries
Creative Sources, 2016)
Christoph Erb(ts, ss) Frantz Loriot(viola)


クリストフ・エルブはスイス出身のテナー・ソプラノサックス奏者で、シカゴ系ミュージシャンとの共演作が多く、名前は知っていたものの聴くのは初めて。シカゴの演奏家らと共演しているのだから勝手にてっきりパワー系だと思っていたら、鳴りと響きを重視したジョン・ブッチャー的な特殊奏法の使い手(ただしブッチャーみたいだと思ってはいけない)だったので驚いた。とはいえ、それはうれしい驚きに違いなくて、このアルバムでも、フランツ・ロリオの細やかなヴィオラの響きとともに、多彩な音を楽しませてくれる。

それにしても、今年は海外フリー系ミュージシャンの来道が多くてうれしい。6月にはネッド・ローゼンバーグや、9月には待望のクリス・ピッツィオコスが来る。今からとても楽しみだ。

Amok Amor - We Know Not What We Do

ピーター・エヴァンス参加の新作を聴く。

We Know Not What We Do

We Know Not What We Do

Christian Lillinger(ds) Petter Eldh(b) Wanja Slavin(sax) Peter Evans(tp)


昨年、メールス・フェスティバルで観てアルバムを取り寄せた Amok Amor の2枚目ということになる(1枚目はこちら参照。ちなみに今年のメールスは6月2~5日、3日にアンソニー・ブラクストン、4日にエヴァン・パーカー、5日にイングリッド・ラブロック・オーケストラ(メアリー入り)と、今回も注目の出演者が目白押しで、特に3日はブラクストン以外にも楽しみなグループが多い)。前作は良くも悪くも『ジャズ』であったが、今作は進化を遂げたというか、良い意味で壊れてきたというか、エヴァンス色が強まったというか。しかしこういう路線に進んでくると、同編成だった初期 MOPDtK の行く末を思い出してしまうのだが、はてさて、このグループはどうなっていくことやら。


参考動画
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Elliott Sharp with Mary Halvorson and Marc Ribot - Err Guitar

メアリー・ハルヴァーソン参加の新作を聴く。

Err Guitar

Err Guitar

Elliott Sharp(g) Mary Halvorson(g) Marc Ribot(g)


エリオット・シャープがリーダーで、メアリーとマーク・リボーはゲスト。トリオ、それぞれのソロのほか、エリオットとメアリー、エリオットとマークのデュオが演奏されるものの、メアリーとマークのデュオはない、ようだ。3人は歪み系ギター(というジャンルがあるかどうか知らない)の三蹟ともいえようが、そんな中にあっても、わたしがつい耳奪われる演奏はどれもメアリーが加わっているものばかりで、皆、音やリズムを自在に歪ませているが、時空すら捻じ曲げているのは一人メアリーのみであり、先輩二人を差し置いて抜群の存在感なのである。

ところで、メアリーのソロ曲なのであるが。ルーパー(?)を使ってなかなか面白い効果を上げている。大変短い演奏なのだけど、これ、一曲で一枚のアルバムになるような長い演奏にすれば、歴史に残るような傑作が生まれるんではないかと思うのだが、どうだろうか。

山口コーイチ・トリオ / 回路

久しぶりに聴く。

Circuit (回路)

Circuit (回路)

山口コーイチ(p) 不破大輔(b) つのだ健(ds) + 加藤崇之(g)


このアルバムは新譜として出てしばらく経ってから、地元店で売れ残っていたのを発見して、こういうのは私が買ってあげなければ、と妙な義務感を発揮して入手したのだけれど、何度か聴いた後はほとんど顧みることがなかった。のだが、3月下旬なってるハウスで、Sightsong さん、id:zu-ja さんとともに「山口さんのピアノが面白すぎる」と盛り上がったのをきっかけに、しばらく聴き返していたら、いやーこんなに良かったのか。何年か前に聴いた時にはなぜか印象が薄かったのだが、それはたぶん、ふだん山口さんのピアノは管楽器と一緒に聴くことが多くて、リード奏者と並走せず対峙しながら時に迂回するようなプレイが好きだったために、「主役」としてのピアノプレイには慣れなかった、ということなのかもしれない。バラード的演奏からフリーまで非常に理知的で、タッチも美しい。控えめに見積もって世界水準なのではないか。プロデュースが足りないのか、本人にその気がないのか、風貌のせいか(←失礼)、もっとパブリシティを獲得してもいいと思うのだけれど。ちなみに、3曲にゲストとして加わった加藤さんとの共演もスリリング。

今井和雄 / the seasons ill

ほうぼうで評判の良い作品をようやく聴く。

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The Seasons Ill

The Seasons Ill

今井和雄(g)


なるほど、これは凄まじい。Sightsong さんや zu-ja さんも同様の指摘をしているが、まるでただの白黒紋様が回転するや多彩な色を錯視させるベンハムの独楽のように、強靭な轟音・爆音・ディレイ・ノイズの中から、さまざまな(おそらくは)意図せざるイメージが奔流のようにあふれ、多層的な音楽が圧倒的スピードで展開されている。これがライブ録音である、という事実も凄い。