Fred Anderson Quartet - Birdhouse
年末年始に買った中古盤は2月19日で打ち止めにしたはずだったが、実はその後、「残り物」を買い足していた。
- アーティスト: Fred Anderson
- 出版社/メーカー: Okka Disc
- 発売日: 2010/06/16
- メディア: CD
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フレッド・アンダーソン、95年(4曲のうち1曲だけ94年)のライブ。アンダーソンのアルバムとしては珍しくピアノが入っていて、このジム・ベイカーのピアノが、アンダーソンが吹いているときはフリーに伴走しつつも、アンダーソンが吹き終えてピアノトリオになったとたん、「昔ながらの」と形容したくなるようなフリー風味をまぶしたモーダルジャズっぽくなる。そして演奏が進むにつれ、アンダーソンのサックスも(やってることはいつも通り、なのだが)それっぽく聴こえてきてしまうから何とも不思議。
Chessex / Noble / Edwards - 12.12.16
OTORoku の DL アルバムをついでにもう一枚。
Chessex / Noble / Edwards - 12.12.16
(OTORoku, 2017)
Antoine Chessex(ts) John Edwards(b) Steve Noble(ds)
幾多のフリージャズサックストリオを支えてきた エドワーズ=ノブル・コンビの今回のお相手は、スイスのアントワーヌ・シェセクス。名前はどこか(忘れた)で引っかかっていたけれど、聴くのは初めて。1980年生まれというから、若手とは言えないだろうが、年寄だらけのこの世界では新世代に属する奏者と言っていいだろう。テナーサックスによる演奏はふつふつ煮え立つようであり、音色もよく、なかなか好印象。なるほどこういう演奏をする人だったのか。
試聴
Yoshihide / Yamazaki / Parker - 14.11.16
久々に OTORoku のダウンロードアルバムを聴く。
Yoshihide / Yamazaki / Parker - 14.11.16
(OTORoku, 2017)
大友良英(g) 山崎比呂志(per) Evan Parker(ts)
これは良かった。エヴァンがテナーサックスだけでソプラノを吹かないのが不満と言えば言えなくもないが、3人のくんずほぐれつが非常に見事である(演奏は最初、エヴァン抜きのデュオから始まるのだが)。むろん3人対等ではあるけれど、主役級の活躍と感じられるのは山崎氏のきめ細やかな粒立ちの良いパーカッションであって、高柳昌行が亡くなるまで長く活動を共にした経歴は伊達ではないとはいえ、これには正直驚いた。ところで、どうして大友さんだけファーストネーム表記なんだろ?
試聴
Crash Trio - Live at Crash
イタリアに注文していたエドアルド・マラッファの旧作が届く。
Crash Trio (Edoardo Marraffa, Chris Iemulo, Stefano Giust) - Live at Crash
(setola di maiale, 2008)
Edoardo Marraffa(ts, sopranino) Chris Iemulo(acg) Stefano Giust(ds)
やっぱりマラッファのサックス(とくにテナー)の音は素晴らしい。もしかすると真鍮の金属結合すら震わせているのではないかと思えるほど管全体を鳴らしきり、硬質でありながら、かつて60年代のフリージャズミュージシャンが持っていたような肉声を感じさせるような生々しさで迫ってくる。現代的でありつつ折目正しきフリージャズ、と聴こえるのは、やはり彼の音に起因するところ大であろう。
参考動画
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Craig Taborn - Daylight Ghosts
- アーティスト: Craig Taborn
- 出版社/メーカー: Ecm Records
- 発売日: 2017/02/10
- メディア: CD
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ECМ作品とはいえ(どうしても偏見が拭い難いのだ)テイボーンのことだからそれなりの高水準はクリアしているだろうとは思っていたが、試聴はせずに予備知識なしで聴いてみたら、いやあ正直ここまで良いとは思っていなかったなあ。クリス・スピードの薄墨を垂らしたようなテナーサックスに比して、テイボーンのピアノのほうがよっぽどホーン的というか前景的であり、ここでベースを弾いているライトカップの「Bigmouth-Epicenter」でのそれを思い出させるような過激なキーボードプレイをこのレーベルでもやるのか、という蛮勇?にしびれた。
EPK
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蜂谷真紀 小山彰太 横山祐太 ユーグ・ヴァンサン / 四柱推命
maki hachiya, shota koyama, yuta yokoyama, hugues vincent / four pillars of destiny
(Improvising Being, 2016)
蜂谷真紀(vo, objects) 小山彰太(ds) 横山祐太(tp) Hugues Vincent(cello)
昨年2月に札幌で録音された音源がフランスのレーベルからリリースされて、それを札幌在住のリスナーが bandcamp で注文してフランスからCDが届く。というのは、なんと回りくどいことをしているのだろう。メンバーのうち2人は札幌在住なのだから、ライブに行けば(たぶん)買えるはずではないか。しかしまあIT社会というのは、ものぐさ者にとってはかように便利なものなのだなあ。と、それはともかくアルバムは非常に楽しくて、中でもユーグのチェロの存在感が抜群に光っている(音楽を鼓舞するその在りようはウィリアム・パーカーをも思い出させる)。そういえばレコーディングの前後、たしかにこのメンバーでライブがあったと記憶しているが、なぜ観に行かなかったのだろう、とCDを聴きながらとても後悔したのだった。
Jemeel Moondoc - MUNTU Recordings
某店でディスカウントしていた。
Jemeel Moondoc - MUNTU Recordings
(NoBusiness Records, 2009)
Jemeel Moondoc(as) Arthur Williams(tp) Roy Campbell Jr.(tp) Mark Hennen(p) William Parker(b) Rashid Bakr(ds)
ジェミール・ムーンドックが70~80年代に率いていたロフトジャズのグループ(レーベル名でもある)「Muntu」の3枚組ボックス。77年の「First Feeding」、79年の「The Evening of the Blue Men」に、75年の未発表音源が加えられている。メンバーはムーンドック、ウィリアム・パーカー、ラシッド・バカーが不動で、「First ~」はアーサー・ウィリアムスとマーク・ヘネンが加わったクインテット、「The Evening ~」はロイ・キャンベルの入ったカルテット、75年の音源がトリオという構成。
何度も書いているけれど、ムーンドックのアルトの音が大好物である。プレイは決して流麗でない。むしろたどたどしい。だが、とぐろ巻くような情念と原初的といえる衝動とともに発せられる音が一体となれば、ひれ伏すしかない。彼のことが好きになったのは最近の、枯れた、ヘタウマのような演奏がきっかけだったけれど、若いころのバリバリにロフトジャズを追求していたころも悪くない。むろんこの当時も決して上手くはないのだが、音楽の美点というのは巧拙を超えたところにあるのだから、面白い。