あうとわ~ど・ばうんど

Julie Kjær 3 ft. John Edwards & Steve Noble 12.1.15

昨夜に続き、OTOROKU のダウンロードアルバムを聴く。

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Julie Kjær 3 ft. John Edwards & Steve Noble 12.1.15
OTOROKU
Julie Kjær(as) John Edwards(b) Steve Noble(ds)


デンマーク出身で英国在住の女性リード奏者 Julie Kjær と、英国を代表するベース・ドラムスとの共演。同メンバーによるアルバムが Clean Feed からも今年出ている(「DOPPELTGAENGER」)が、そちらは未聴。Julie Kjær はアルトサックス一本で計30分ほどの演奏に臨んでいるが、耳なじみのよいリフ(どこかで聴いたことがある気がするんだが、まあよくありがちなメロディーおよびリズムではある)を随所で聴かせ、3者の調和を重んじたような、抽象的になりすぎないプレイに好感を持った。


試聴

SAX RUINS 16.8.16

Sax Ruins が Cafe OTO で先月行ったライブが、OTOROKU レーベルからダウンロードアルバムとして発売されている。

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SAX RUINS 16.8.16
OTOROKU
Ryoko Ono(as, bs) Tatsuya Yoshida(ds)


一糸乱れぬ超絶リフや即興パート(どこまでかは分からぬながら)が、相変わらずとてもかっこいい。音だけでもこれだけ楽しいのだから、生で観たら何倍も興奮するのだろうな。と思いつつ、英国の観客はその恩恵に浴しているのに、(小埜さんの出身地である)北海道ではいまだ観る機会がないのは、複雑な気分ではある。


試聴

渋谷毅 市野元彦 外山明 / Childhood

Childhood

Childhood

渋谷毅(p) 市野元彦(g) 外山明(ds)


発売直後に入手してから折に触れて聴いていて、良いアルバムであることに間違いはないのだけれど、はて、では何がそんなに良いのだろう?と思うと、説明に困る。ジャケに使われている写真は、忘れ去られたかのような展望鏡(中ジャケには打ち捨てられたかのような公園)、タイトルは「Childhood」。と来れば、郷愁や喪失感を感じる音楽が展開されると思いそうだが、そうではない。穏やかで美しい、ということとも違う。柔らかで温か、間違いではないが正確ではない。優しく豊か、たしかにそうだが、それだけではない。わたしの凡庸な比喩には収まらない多義的な音楽があふれていて、ふだんは喧しく個性がバチバチぶつかり合うような音楽ばかり聴いていると、こういう演奏に接して言葉を失わざるを得ないが、心にすっと入り込むと、ゆらゆら楽土へと連れ去られる心地がするのはたしかだ。(結局なんにも説明していない)

Jason Roebke Octet - Cinema Spiral

ジェイソン・ローブク・オクテットの新作を聴く。
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Jason Roebke Octet - Cinema Spiral
NoBusiness Records, 2016)
Greg Ward(as) Keefe Jackson(ts, sopranino sax, contrabass cl) Jason Stein(bcl) Josh Berman(tp) Jeb Bishop(tb) Jason Adasiewicz(vib) Jason Roebke(b) Mike Reed(ds)


同グループによるアルバムはこれまで、Delmark からも出ている(「High-Red-Center」)が、そちらは未聴。編成としてはスティーヴ・リーマン・オクテットに似ているが、シカゴを拠点とするミュージシャンたちによるグループのためか(というより、そういうコンセプトなのだろうが)、コンテンポラリーなジャズというよりは「Out to Lunch」をフリージャズ寄りに拡大化させたような印象で、タイトルから示唆されるようにサスペンサブルな映画音楽のようにも聴こえる。


試聴

SEIKATSU KOJYO IINKAI / 生活向上委員会ニューヨーク支部

やっと届いた。

生活向上委員会ニューヨーク支部

生活向上委員会ニューヨーク支部

梅津和時(as) 原田依幸(p, bcl) Ahmed Abdullah(tp) William Parker(b) Rashid Shinan(ds) Ali Abuwi(engineer)


幻の名作、ついに待望のCD化なる。もっとも、実はレコードから直接落としたCDRを持っていて(さっき捨てた)、内容は重々承知なのではあるが、こうして正規盤として聴けるようになったことをしみじみ喜びたい。長かったなあ。しかしながら、今回あらためて聴いて実感したのは、ここで聴かれる音楽が紛れもなく「ロフト“ジャズ”」であり、梅津さん原田さんも70年代半ばのNYジャズシーンにとって決して食客ではなく、欠くべからざる一員だったのだろうなあ、ということ。2人は帰国後、「その前夜/集団疎開 Live at 八王子アローン(紙ジャケット仕様)」を吹き込むことになるが、本作が2人のディスコグラフィー上もっとも初期の姿をとらえたものであるという点でも、ドキュメントとして非常に貴重だ。今年の「再発・復刻部門」ベスト1の間違いなく最有力候補



試聴

www.youtube.com



梅津和時さんの過去記事一覧(旧ブログ)
原田依幸さんの過去記事一覧(同)

David S. Ware & Matthew Shipp DUO / Live in Sant'Anna Arresi, 2004

デヴィッド・S・ウェアのアーカイヴ音源シリーズ第2弾が、彼の命日(10月18日)を前にリリースされている。

Live in Sant'anna Arresi 2004

Live in Sant'anna Arresi 2004

David S. Ware(ts) Matthew Shipp(p)


イタリアはサンタンナ・アッレージで毎年9月初旬に開催されているジャズフェス「Ai confini tra Sardegna e Jazz」における2004年のライブ。ウェアはこの年、1日にカルテット(マシュー・シップ、ウィリアム・パーカー、ギレルモ・ブラウン)で出演した後、5日にもシップとのデュオでステージに立った。(ちなみに今年、「Tribute to David S. Ware」として、シップがソロで出演している)

本盤について id:zu-ja さんがツイッターで、聴きながら「途中涙ぐんでしまった」旨を書いていたが、それは比喩でも誇張でもないと思う(おそらくはアノ部分とかアノ箇所であろう)。ウェアのテナーは叫びや悦びや怒りや哀しみや祝福や祈りが一体となって煮えたぎった凄い音であるので、聴いていると色々な感情が奥底から次々呼びたてられるのだ。本作はさらにシップの好サポートもあって、それが純化されているように感じる。

なお、CDには今後のリリース予定も付記されていて、第3弾は2010年、ニューヨークでのトリオライブ(「ONECEPT」の頃のパーカー、ウォーレン・スミスとのトリオと推察される)。第4弾が2008年、フランスにおけるニューカルテット(晩年に率いた Planetary Unknown ではなく、「Shakti (Dig)」発表後に欧州ツアーを行ったジョー・モリス、パーカー、ナシート・ウェイツ(アルバムではウォーレン・スミス)とのカルテットだろう)だそうで、今後も非常に楽しみ。


参考動画1(実際のライブの模様)

www.youtube.com


参考動画2(その4日前のカルテット)

www.youtube.com




S・ウェアの過去記事アーカイヴ(旧ブログ)
David S. Ware Sessionography(外部サイト)
AUM Fidelity 公式HP(同)

Dave Liebman & Richie Beirach / Balladscapes

地元CD店で目にし、気が向いて購入。

Balladscapes

Balladscapes

David Liebman(ss, ts, fl) Richie Beirach(p)


バッハの「Siciliana」で幕を開け、「For All We Know」(スタンダードの方)やら、同じくスタンダードの「This Is New」やら、2人の代表作「Quest」やら、アントニオ・カルロス・ジョビンの「Zingaro」やら、ウェイン・ショーターの「Sweet Pea」やら、ジョン・コルトレーンの「Welcome / Expression」やら、デューク・エリントン~ビリー・ストレイホーンの「Day Dream」やらが演奏されている。

盟友ともいえるこの2人には、数々のデュオ作品や2人が核になった各種グループ作品があまた存在していて、私はそのほんの一部しか聴いていないのだが、それらの作品群の中では情念がダダ漏れしているような演奏(2人が、というより、主にリーブマンに起因するものであるのだが、それも彼の魅力の一つ)が好物なのだけれど、このアルバムのような抑制美もたまにはいい。